毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はダイハツ ストーリア(1998-2004)をご紹介します。
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文/伊達軍曹、写真/DAIHATSU
■サイズアップしたシャレードに代わるリッターカーとして登場したストーリア
1997年に創業90周年を迎えたダイハツが1998年に発売した、個性的な内外装と新開発の低燃費エンジンを採用したリッターカー。
だが、やや個性的すぎる造形と「ダイハツ」のブランドイメージが、リッターカーを好んで購入する一般層には刺さらなかったのか、1代限りで生産終了となった小型乗用車の佳作。
それが、ダイハツ ストーリアです。
前述のとおり1997年に創業90周年を迎えたダイハツは、同年4月から「We do COMPACT」を新たな企業スローガンとして掲げました。
「We do COMPACT」という英語の公式な和訳は存在していないようですが、筆者が意訳するとしたら「小型車ならダイハツ!」といった感じになるでしょうか。
ちなみに当時のプレスリリースによれば、ダイハツは「小さいクルマが主役の、真に豊かなクルマ社会のリーディングカンパニーを目指す」みたいなことを言っています。
そんな気概を持ったダイハツが1998年2月に発売したのが、全長3660mm×全幅1600mm×全高1450mmという、同世代の日産マーチなどより一回り小さなボディに新開発の1L3気筒エンジンを搭載した「ストーリア」でした。
全体のデザインは「未来的」とも「レトロっぽい」ともとれそうな、絶妙あるいは微妙なテイスト。特にアーモンド状につり上がったヘッドランプと大きく開いたフロント開口部は、かなり特徴的でした。
前述の新開発1L直3DOHCエンジンは最高出力こそ60psと、軽ターボよりもローパワーでしたが、実用回転域でのパワーとトルクを重視したセッティングであり、実際の走りは820〜900kgと車両重量が極端に軽いこともあって、まずまずパワフルといえるもの。
また回転半径がクラス最小の4.3mである点も、ダイハツ ストーリアの美点だったといえます。
2WD/5MT車のカタログ燃費は21km/Lと、当時のガソリン車のなかではトップレベル。
そして当時の新衝突安全ボディ「TAF」を採用し、ABSやデュアルエアバッグなどを標準装備としつつ(※ABSはCXのみオプション)、初期型の車両価格は89万8000円から142万8000円と、ほぼ軽自動車並みに抑えられていました。
1998年4月には競技用ベース車両であるX4(クロスフォー)を追加。こちらは713ccの直4ターボエンジンを搭載した、通常のストーリアとはずいぶん異なる伝説のモデルです。
そして2000年5月のマイナーチェンジで1.3Lの直4エンジンを追加し、1L直3エンジンも可変バルブ機構付きのタイプに変更。
さらに2001年12月のマイナーチェンジで外観デザインを大きく変更し、前述した「未来的でもあり、同時にレトロっぽくもあり……」という通称“宇宙人顔”は廃され、俗に“トヨタ顔”と呼ばれるフロントマスクに変わりました。
しかしダイハツ ストーリアの販売状況が好転することはなく(トヨタにOEM供給された「デュエット」はまあまあ売れたのですが)、ストーリアの生産は2004年5月に終了。
そして同年6月、トヨタと共同開発した初代ブーンの発売に伴い、ストーリアは販売終了となりました。
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