■トヨタの子会社化により役割を終えたストーリア
意欲作ではあったダイハツ ストーリアが、あっけなく1代限りで生産終了となった理由。それは端的にいえば、前段の最後で軽く触れたとおり「次期型であるブーンが誕生したから」です。
ダイハツ ストーリアは「デュエット」としてトヨタにも供給されましたが、ストーリアの開発と設計はあくまでもダイハツが行ったもので、トヨタ デュエットは単なるOEM供給版に過ぎませんでした。
しかし1998年9月にダイハツはトヨタの連結子会社となり、次期型のリッターカー(初代ダイハツ ブーン/トヨタ パッソ)はトヨタが企画を主導し、ダイハツが設計開発と生産を主に担当する「共同開発」とすることが決まったため、ダイハツが独自開発したストーリアには「もはや出る幕がなかった」ということです。
このようにしてダイハツが気合を入れて作ったリッターカーの命運はとりあえず尽き、ダイハツ主導によるリッターカーの発売は2016年4月の3代目ダイハツ ブーン/トヨタ パッソまで待たねばならないことになりました。
しかしそれはそれとして、絶版となったダイハツ ストーリアはけっこう悪くない小型車ではありました。
3気筒エンジン特有の振動は「エンジン本体を液体封入マウントで支持する二重防振車構造を採用することで解決した」とされていましたが、実際はけっこうな振動と騒音を伴う、お世辞にも「甘美なエンジン」とは言い難いものでした。
しかしそれでも中低速トルク重視のセッティングと800kg台の軽い車重が相まって、1L版ストーリアの加速感はまずまずでしたし、後に追加された1.3Lエンジン搭載車は「けっこう速い!」とすら形容できるものでした。
また後期型の通称“トヨタ顔”はさておき、前期型の“宇宙人顔”は――好き嫌いはあるかと思いますが、なかなか秀逸なデザインであったように思えます。
それゆえ、伝説のホットハッチである「X4」ではなくても、いまだ熱心なファン(というか、今なお乗り続けている愛好家)の数はそれなりに多く、特に1.3L版はまずまず愛し続けられている模様です。
しかし“宇宙人顔”は一般的にはウケが悪く、また2000年代初頭は「猫も杓子もミニバン」みたいな時代でもあったため、オーソドックスなボディ形状でしかなかったストーリアがメインストリームに乗るのはちょっと難しい状況でした。
以上のような流れでダイハツ ストーリアは「必然的に」消滅したわけですが、それでも、この軽量っぷりとよく回る1.3Lエンジンの組み合わせはなかなか魅力的です。
そして「ここまで軽いリッターカーは(衝突安全基準などの関係で)もう二度と手に入らない」という意味でも、ある程度の価値はあるような気がいたします。
しかし2020年10月現在、ダイハツ ストーリアの中古車流通量はすでに激少。
……マニアックな「X4」以外は、残念ながらそう遠くないうちに中古車試乗からも消滅するかもしれません。
■ダイハツ ストーリア 主要諸元
・全長×全幅×全高:3660mm×1600mm×1450mm
・ホイールベース:2370mm
・車重:870kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1297cc
・最高出力:110ps/7000rpm
・最大トルク:12.8kgm/4400rpm
・燃費:17.6km/L(10モード)
・価格:133万8000円(2000年式 ツーリング 4AT)
コメント
コメントの使い方