■作りや乗り味がもっと良ければツインはもっと売れていたのか?
力作だったかどうかは知りませんが、少なくとも「話題作」ではあったスズキ ツインが、あまり売れずにとっとと廃番になってしまった理由。
世の中的には、「作りが(値段なりに)粗かった」とか「特にハイブリッドは笑っちゃう感じだった」などと言われています。
またツインのことを好意的に思っている人からは、「コンセプトは悪くなかったが、早すぎた。時代の先を行き過ぎていた」なんて声も聞かれます。
それらはすべてもっともだと筆者も思いますが、同時に、少々の疑問もあります。
前者に対しては、「ではツインは、作りや乗り味がもっと良ければ売れていたのでしょうか?」と聞きたいですし、後者には「では2020年に、2020年の技術で作られたツインが発売されていたら、売れたでしょうか?」と問いたいのです。
もちろん物事の結果というのは、やってみないとわからないものです。
しかし、たぶんですがツインは、仮にもっと出来や質感が良かったとしても売れなかったでしょうし、仮に2020年7月頃に、2020年なりの技術で作られたモノが発売されたとしても、あまり売れなかったでしょう。
要するに「超小型モビリティ」というジャンルそのものが、まだヒット作を生めていないのです。
鳴り物入りで登場した「スマート フォーツー」も結局大して売れませんでしたし、トヨタのiQも鳴かず飛ばず。商用車のジャンルにはなりますがダイハツ ミゼットIIも、ヒット作にはなり得ませんでした。
超小型モビリティが今ひとつ売れない理由は、筆者を含む一般的な消費者というのはどうしたって「貧乏くさくてケチくさい」からです。
頭では「都市部でコミューターとして使うにはスマート フォーツーぐらいのサイズで十分なのだ」と考えていますし、そんな感じのエラソーで利口ぶった原稿を書いたりもします。
しかし実際に自分のカネを出して車を買う際には、「……やっぱり、イザというときのために人も荷物も載せられる車のほうが……」みたいな、さっきの高邁な理念はどこに行ったんだ! と自分にツッコミたくなる、ケチくさい考えをしてしまうのです。
筆者がもしも酒販店のオーナーだったとしても、ダイハツ ミゼットIIは導入しなかったでしょう。
狭いエリアでの配達に便利なのはわかりますが、「とはいえ今ある軽トラでも、なんとかなるっちゃなるし……」と考えてしまい、結局「ミゼットIIを増車する」という経営判断はできなかったはずです。
このように、超小型モビリティは「人にサイフを開けさせる」という部分で苦戦してきましたし、今後も苦戦は続くと思われます。
しかし迫りくる「超高齢化社会」においては、もしかしたら状況は変わるのかもしれません。
トヨタ ヤリスぐらいのサイズでさえ「自分にはちょっと大きいな……」と感じる人が多数を占める世の中になったならば、スズキ ツインぐらいのサイズの車が、そこそこは売れるでしょう。
筆者も2040年頃にはツイン的なサイズの車を買い(その頃には半自動運転のEVが主流でしょうか?)、近所のスーパーまでトコトコと買い出しに行きたいと思っています。
■スズキ ツイン 主要諸元
・全長×全幅×全高:2735mm×1475mm×1450mm
・ホイールベース:1800mm
・車重:600kg
・エンジン:直列3気筒DOHC、658cc
・最高出力:44ps/5500rpm
・最大トルク:5.8kgm/3500rpm
・燃費:22.0km/L(10・15モード)
・価格:84万円(2003年式 ガソリンB)
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