今や販売台数ランキングで上位に位置するモデルの多くにはハイブリッド車が設定されており、モデル別のパワートレイン比率でも半数をハイブリッド車が占めるほどの人気ぶりだ。
そんなハイブリッドシステムでひとり勝ちといえるのが、トヨタの「THS」。コンパクトカーからミニバンまで幅広い車種に採用されているストロングハイブリッドだ。
このトヨタに挑むのがホンダ、日産なのだが、大々的なイメージ戦略で知名度を上げた日産の「e-POWER」とは対照的に、いまいち影が薄いのがホンダのハイブリッド「e:HEV(従来のi-MMD)」だ。技術はあるのに、なぜホンダはパッとしないのか?
ファンとしては気になるであろうそのワケと、システムとしての将来性について語っていきたい。
文/国沢光宏
写真/編集部、NISSAN
【画像ギャラリー】可能性は充分に持っている! ホンダの2モーターハイブリッド「e:HEV」を搭載したモデルたち
■現時点ではトヨタに届かず! ホンダがパッとしないホントのところ
ここにきてトヨタのハイブリッドが世界的規模で高い評価を受け始めている。もちろん日本市場についていえば以前からひとり勝ち状態だったものの、2019年あたりからヨーロッパでも大きく販売台数を伸ばしてます。なぜか? ヨーロッパのCAFE(企業平均燃費規制)をクリアしようとしたらトヨタのストロングハイブリッドが圧倒的に高いコストパフォーマンスを持つからにほかならない。
最近急に増えてきた48Vのマイルドハイブリッドでは燃費向上分が少ない。2021年から始まる緩い第一段階の規制値すらクリアできないレベルなのだった。結果、48Vハイブリッド勢の多くが燃費基準未達成の反則金を支払わなければならない状況。一方、トヨタのハイブリッドなら「RAV4」のようなミドルクラスのSUVさえ基準をクリアできる燃費になるのだから素晴らしい!
アメリカもバイデン政権になったなら、トランプ氏が反故にしたアメリカCAFE復活の方向になると思う。ちなみに本来なら2025年に平均燃費23km/Lだったのを、トランプ氏は強引に2026年に17km/Lとしたのだった。本来のCAFE目標値になればストロングハイブリッドを大量に導入するしかクリアする方法はなし。
長い前置きになった。順風満帆のトヨタ式に対し、現在ホンダの主力となっている2モーターハイブリッド「e:HEV」はどうなのだろうか? 結論から書くと「効率という点から評価するならトヨタのハイブリッドを凌ぐ可能性を持つ」と言ってよかろう。ちなみにホンダの2モーターと日産「e-POWER」は基本的に同じだと思ってよい。日産も含めて考えたい。
まず燃費。ホンダ式ハイブリッドを搭載する「アコード」の場合、WLTCモードの総合で22.8km/Lとなる。トヨタ「カムリ」はどうかといえば、最も軽いグレードを除くと、24.3km/L。アコードを凌ぐ。WLTCモードは総合のほか、停止の多い「市街地」と、流れのよい「郊外」、速度の高い「高速」と3つに分かれており、アコードは市街地を除きすべて負けてます。
ホンダ「フィット」のハイブリッド、同じ車重のトヨタ「ヤリスクロス」のハイブリッドと比べ勝てない。実用燃費もまったく同じ傾向で、トヨタの優位です。なぜか? 普通のクルマだと「ミッション」に相当する動力伝達機構の効率が高いのだと思う。ホンダ式だと、エンジンで電気を作り、その電気でモーター駆動している。
エンジンで電気を作る段階でロスが出るし、電気でモーター駆動するときもロス出てしまう。トヨタ式の場合、大ざっぱに言って動力の半分はエンジン直接駆動。半分を電気にしてモーター駆動しているため、総合的な伝達ロスが少ないと言うことになります。こう書くと詳しい人なら「ホンダも巡航時はエンジン直接駆動している」と思うだろう。
確かにそのとおり。ホンダ式は巡航状態になるとクラッチを繋いでエンジン直接駆動としている。だとしたら、WLTCの郊外や高速燃費でトヨタを凌ぐハズ。けれど負けているのだった。しかも、直接駆動していない市街地のほうが燃費で勝ってます。いずれにしろ現状だとホンダ式はトヨタ式に勝てていない。
ホンダ方式に近いe-POWERはどうかといえば、現状だと燃費じゃトヨタにもホンダにも勝てていない。なぜ人気あるのかとなれば、ドライバビリティが優れているからだ。比較的容量の大きい電池を搭載しているため、追い越しなどでアクセルあけた時のレスポンスはライバルを圧倒する。ハイブリッドって充分に燃費いい。少し悪くても楽しいほうを選ぶということでしょう。
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