毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はスズキ ツイン(2003-2005)をご紹介します。
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文/伊達軍曹、写真/SUZUKI、ベストカー編集部
■ハイブリッドも搭載! 20年前に現れた超斬新・異色の超小型モビリティ
「経済的で実用的な2シーター軽乗用車」として登場したが、あまりに斬新すぎたか、登場からわずか2年8カ月余りで消えていった異色の超小型モビリティ。それが、スズキ ツインです。
スズキ ツインの原型となったのは、1999年10月に行われた第33回東京モーターショーに参考出品された「Pu3コミュータ」。
もっとも優れたコンセプトカーに贈られる「ザ ベスト コンセプトカー」特別賞を受賞したPu3コミュータは約3年後の2003年1月、「スズキ ツイン」という車名で正式発売されました。
コンセプトカーにはあったEVはさすがに市販バージョンには用意されませんでしたが、それでも、660ccのガソリンエンジン搭載車のほかに「市販軽自動車初のハイブリッドシステム搭載車」を、スズキは用意してきました。
ボディサイズは全長2735mm×全幅1475mm×全高1450mmというミニマムなもので、乗車定員は2名。
最小回転半径は、国内四輪乗用車では最小の3.6mでした。
パワーユニットは、最高出力44psの3気筒ガソリンDOHCエンジンを基本としつつ、前述した「市販軽自動車初のハイブリッドシステム」も用意されました。
そのシステムは、エンジンとトランスミッションの間に最大出力5kWのモーターを搭載してエンジンをアシストするというもので、バッテリーは二輪車用の鉛バッテリーをHV向けに改良したもの。
この鉛電池を8個直列したブロックが2つ直列されるという形です。
このハイブリッド版は車両価格が非常に高く、パワステやエアコンなどの装備を省いた「ハイブリッドA」でも129万円で、快適装備が備わる「ハイブリッドB」は139万円もしました。
ハイブリッド版のツインに関しては、スズキもおそらくは本気で量販するつもりはなく、「とりあえず作った」という感じだったのでしょう。
真の量販(を目指した)グレードは、車両価格49万円のガソリンA(2WD/5MT)または84万円のガソリンB(2WD/3速AT)でした。
スズキ ツインのガソリンAまたはBは、各部の質感や乗り味などは当然「値段なり」というニュアンスでしたが、それでも独特の軽快感があることから、一部の人には受け入れられました。
しかし残念ながら幅広い層に刺さることはなく、グレードの追加や一部改良などを行ったものの、売れ行きは伸びませんでした。
そのためスズキは2005年8月にあっさりとツインの生産を終了。同年12月には販売のほうも終了となりました。
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