世界が大きく動く!? 米加州「2035年までにガソリン車ゼロ」が及ぼす影響【クルマの達人になる】

世界が大きく動く!? 米加州「2035年までにガソリン車ゼロ」が及ぼす影響【クルマの達人になる】

 米国カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は2020年9月23日、同州内におけるガソリン車の新車販売を2035年までに段階的に禁止すると発表した。

 同年までに、州内で販売するすべての新車をゼロ・エミッション車両(※この規定がそのまま適応されるとすると、ハイブリッド車もPHEV車も新車販売できなくなるということ)とすることを義務付ける知事令となる。他州が追随する可能性があり、自動車各社による電気自動車(EV)開発競争がさらに過熱するのは確実だ。

 カリフォルニア州の行政命令が、アメリカ市場で戦う日本の自動車メーカーにどのような影響を及ぼすのか? これまでの規制について振り返りつつ考察していきたい。

文/国沢光宏
写真/Adobe Stock(Rasulov@Adobe Stock)、HONDA、NISSAN、編集部

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■鍵はバッテリーの調達! これまでも難題をクリアしてきた日本メーカー

 カリフォルニア州が突如「2035年までにガソリン車の販売を禁止する」と発表した。昨今頻発している大規模山火事の視察現場における州知事の発言である。

 山火事の頻発は地球温暖化に気候変動が原因だと認識している人は多い。真実かどうかなど関係なく、とにかく二酸化炭素の排出量を減らさないとアカンと考えている人が多いのだった。そもそもカリフォルニア州は、スモッグによる健康被害続出となり世界で最初の排気ガス規制を作った土地柄だけに、環境意識は強い。

カリフォルニア州のロサンゼルス、サンフランシスコは、かつて光化学スモッグの原因となる大気汚染物質オゾンの大気中濃度の高さが米国内で1位、3位となっていた(HIROSHI H@Adobe Stock)
カリフォルニア州のロサンゼルス、サンフランシスコは、かつて光化学スモッグの原因となる大気汚染物質オゾンの大気中濃度の高さが米国内で1位、3位となっていた(HIROSHI H@Adobe Stock)

 漏れ伝わるところによれば、ホンダがF1撤退を決断する際の決定的な理由になったそうな。アメリカに軸足を置くホンダにとってカルフォルニア州は象徴のようなもの。

 そもそもホンダの成功はマスキー法をいち早くクリアしたCVCC(Compound Vortex Controlled Combustion)エンジンによるものだし、1990年代から始まるZEV(ゼロエミッション・ビークル)法案に含まれるULEV(大気よりクリーンな排気ガスしか出さない規制)でもホンダが最初にクリアした。カリフォルニア州の決定は絶対的なものなのである。

1973年12月に発売されたCVCCエンジン搭載第一号となるホンダ「シビック・CVCC」。世界初のなるマスキー法をクリアするエンジンの開発成功により、ホンダの技術力は世界中から高い評価を受けた
1973年12月に発売されたCVCCエンジン搭載第一号となるホンダ「シビック・CVCC」。世界初のなるマスキー法をクリアするエンジンの開発成功により、ホンダの技術力は世界中から高い評価を受けた

【用語解説】[1]CVCC:Compound Vortex Controlled Combustion(複合渦流調整燃焼方式) [2]ZEV:Zero Emission Vehicle(ゼロ・エミッション・ビークル)の略 [3]ULEV:窒素酸化物や非メタン炭化水素などの有害物質の排出量を、国が定める規制基準値よりもさらに低減させた自動車 [4]SULEV:窒素酸化物や非メタン炭化水素などの有害物質の排出量を、ULEVの基準値よりもさらに低減させた自動車

 一方、ガソリン車の販売禁止など「できっこないでしょう!」と思う人も多いことだろう。興味深いことに前述のマスキー法もZEV法案も「目標値が高すぎるため絶対無理!」と言われていた。大半の自動車メーカーは「技術的に実現できないだろう」と余裕カマしていたほど。

 けれどマスキー法はホンダとマツダ。ULEVもホンダと日産が対応してしまった。今や当たり前のようにULEVよりさらにクリーンなSULEVすら当たり前。燃料電池車まで実用化されている。

 ZEV法案に比べればガソリン車の販売禁止はハードル低い。現在普及が始まっている電気自動車にバトンタッチすればいいだけですから。

 今や最もリーズナブルな電気自動車と言われるテスラの「モデル3」は実用航続距離430km(WLTPモード)のタイプで約500万円から。すでにガソリン車に変わるパフォーマンスを有している。ここから15年かけ価格を下げていくだけでいい。翻って10年前を考えると、日産「初代リーフ」です。航続距離は200km(JC08モード)で、価格は約400万円だった。

2016年3月に発売されたテスラ「モデル3」。全長4686mmと欧州Dセグメントより少し大きいくらいのサイズ感で、グレードによって航続距離は異なるが、スタンダードレンジで航続距離430km(WLTPモード)、価格は511万円となっている
2016年3月に発売されたテスラ「モデル3」。全長4686mmと欧州Dセグメントより少し大きいくらいのサイズ感で、グレードによって航続距離は異なるが、スタンダードレンジで航続距離430km(WLTPモード)、価格は511万円となっている
2010年12月に発売された日産「初代リーフ」の性能は24kWhのバッテリーを床下に搭載し、公表値となるJC08モードでの航続距離は200kmだった
2010年12月に発売された日産「初代リーフ」の性能は24kWhのバッテリーを床下に搭載し、公表値となるJC08モードでの航続距離は200kmだった

 バッテリーのコストはまだまだ下がるし、性能だって上がっていく。10年もすればリチウムイオン電池を圧倒する全固体電池など実用化され、コストダウンが始まっているだろう。車体価格+走らせるためのエネルギーコストを考えたら、ガソリン車に並ぶ日はそう遠くない。総合して評価すると、2035年までにガソリン車の販売を禁止することなどマスキー法のクリアより難しくないように思える。

 ただその段階で激しいサバイバル戦争が起きるに違いない。バッテリーの調達価格の問題です。安価なバッテリーを入手できるメーカーは販売台数を伸ばし、バッテリーを独占することだろう。安価なバッテリーを入手できないメーカーは生存競争に負けてしまう。

 カリフォルニア州はアメリカの自動車販売台数の10%以上を占めるし、ほかの州も同じような法案を出してくると思う。同時進行形で欧州の電気自動車化が進む。今後10年は激変の時代になると予想しておきましょう。

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