政府が補助金の倍増を検討!! 世界のEV普及策とはどう違う!? EV普及のカギとは何か!?

■なぜ欧州、米国は電動化に積極的なのか!? 厳しくなる規制

 政策やEVの商品性と価格において、欧州がEV導入へ積極的なのは、2021年から走行中の二酸化炭素(CO2)排出量規制が強化されるからだ。1km走行するにあたり、排出できるCO2は95gまでとなる。これは、日本式の燃費感覚からすると、28km/Lほどと考えていい。しかもこれは、自動車メーカーが販売するすべての車種の平均値として評価される。この数値を達成できなければ、1台当たり1g増すごとに95ユーロ(約1万2000円)の罰金が求められる。

 これまでは120g規制だったので、従来の性能のままと仮定すると、1台につき2375ユーロとなり、1台売るごとに30万円前後の罰金を支払うことになる。これでは、利益が圧迫されてしまう。

 欧州の自動車メーカーが相次いでEVを発売し、ポルシェまでが「タイカン」を売り出し、同時にSUVなどを含めプラグインハイブリッド車(PHEV)の車種も急増している背景に、こうした強制力を持つ規制がある。

2021年からCO2規制が強化される欧州では、各自動車メーカーが次々と新型EVを発表している。ポルシェまでが「タイカン」を売り出した
2021年からCO2規制が強化される欧州では、各自動車メーカーが次々と新型EVを発表している。ポルシェまでが「タイカン」を売り出した

 米国は、1990年代初頭からZEV(ゼロ・エミッション・ヴィークル)法がカリフォルニア州で施行され、ただしその実施は、リチウムイオンバッテリーが実用化する2012年まで繰り延べられてきた。さらに、2018年から対象自動車メーカーが広範囲に広がり、販売台数の多少にかかわらずZEV規制への適合が求められるようになった。

 この規制には、EVだけでなくPHEVも割引率を掛けながらも対象とされてきたが、PHEVが認められる台数は年を追うごとに減っていく。カリフォルニア州の目的は、何より排出ガスゼロ車の普及を目指すからだ。

 2020年カリフォルニア州で販売される新車のうち、9.5%をZEVとする。そのうちEVは6%、PHEVは3.5%であった。だが、2025年には新車販売の22%までZEVとすることが求められ、その内訳はEVが16%で、PHEVは6%にとどまる。

 したがって米国の自動車メーカーも、キャデラックの「リリック」や、フォード「マスタング・マッハE」などEV導入に積極的な姿勢を見せているのは、いつまでもPHEVに依存できないなら、早くEVへ転向し、市場形成したほうが得策だと考えるからだろう。

 とくにプレミアムブランドを自認するメーカーであったり、プレミアムな車種であったりする場合、EVのほうが静粛性も乗り心地も、そして動力性能も高くなり、一方で従来主力だったV8エンジンを止め、V6エンジンやハイブリッドとしなければならないなら、EVのほうがずっと高級になるからでもある。高級車なら、リチウムイオンバッテリーの原価分も販売価格に転嫁しやすくもある。

写真はキャデラック「リリック」。米国では、ガソリン車やPHEVから脱却する動きが進んでいる
写真はキャデラック「リリック」。米国では、ガソリン車やPHEVから脱却する動きが進んでいる

■日本でもEVの普及は進むか!? その期待と課題

 こうした欧米の社会情勢に比べ、日本市場でのEVの近未来はどうなのだろう。

 先般、日本EVクラブが有明でEVフェスティバルを開催し、そのEV試乗会への来場者のなかで、20台半ばの若者が運転免許証を取得してから買った最初のクルマがEVだと語っている。なおかつ、エンジン車に乗る気はないとも。既存の新車販売でもハイブリッド比率は半分以上、あるいは6~7割という車種もあるくらい、電動化されていないエンジン車を選択する人が減っている実情がすでにある。

 しかし、EVの普及には大きな課題が目の前にある。それは、集合住宅の管理組合の存在によって、マンションなどの駐車場に普通充電器を設置できないことだ。この問題は、10年前に初代リーフが発売されて以降まだ解決されずにいる。これがEV普及の足かせになっている。

管理組合の同意を得なくても充電器をマンションに設置できるように法整備をすれば、EVの普及はもっと早く進むだろう
管理組合の同意を得なくても充電器をマンションに設置できるように法整備をすれば、EVの普及はもっと早く進むだろう

 EVは自宅で充電するのが基本であり、ガソリンスタンドに立ち要るように急速充電器で充電することは、時間を要するだけでなく、リチウムイオンバッテリーへの負荷という点においても合理的でないからだ。

 自宅を満充電で出発し、目的地で用事を済ませたり宿泊したりする間に、再び普通充電するのがEVにもっとも優しい充電方法である。急速充電は、その途中でどうしても電気が足りなくなったとき、やむを得ず行う充電方法なのだ。なおかつ、目的地に到着できる分だけ充電すればいいので、必ず30分止まっていなければならないことはない。

 また目的地とは、必ずしも仕事先や宿だけでなく、食事をするレストランや、買い物に立ち寄る店なども含まれ、そこで滞在する1~2時間でも普通充電をすれば足を延ばせる。

 以上のように、わざわざ充電するのではなく、寝ていたり、食事をしたり、買い物をしたり、仕事をしたりというように、用意を済ます間に充電できるのがEVの最大の特徴で、ガソリンスタンドに立ち寄るように、あえて燃料補給のため寄り道をしなくていいのがEV利用の快適さであるのだ。

 その基本となる自宅での充電が、集合住宅でできない現状は大問題だ。補助金や減税政策だけではその壁を乗り越えられない。2050年の温室効果ガスゼロを目指すなら、EV普及のため、たとえばEV充電器の設置に関しては管理組合の同意を得なくてもできるような、特例措置を法制化するなどを行わなければ、目標達成は不可能なのである。

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