■フィットe:HEV/ヤリスハイブリッドとは「格が違う」
4WDシステムはモーターのスペック表を眺めて把握できるものではなく、クルマに乗ってみないとわからないものではあるが、現時点で比較ができる4WDシステムの違いと、後輪モーター出力の数値でライバル車と比較をしていこう。
ホンダ『フィットe:HEV』の4WDは、簡素なスタンバイ式のビスカスカップリング4WDだ。前後輪の回転差が大きくなると効き始める仕組みで「余計なところでは効かない」という安定感はあるが、積極的に車両挙動をコントロールするようなシステムではない。
またトヨタ『ヤリスハイブリッド』は、後輪用のモーターが駆動する4WDシステムで、最大出力は3.9kW(5.23ps)、最大トルクは52Nm(5.3kgm)程度であり、これはE12ノートと同レベル。こちらも、新型ノートの数値には及ばない。ちなみにヤリスクロスも、モーター出力を見る限り、まったく同じシステムだ。
新型ノートの後輪用モーターのスペック(最高出力50kW/最大トルク100Nm)は、例えばハリアーハイブリッドのE-Fourに搭載されている後輪モーター(最高出力40kW/最大トルク121kW)に近い。車重が300kg軽い(新型ノート4WDが1340kg、ハリアーハイブリッドが1680kg)新型ノートには、ずいぶんと贅沢なリアモーターであることがわかる。
ちなみに、4WD駆動制御に長けているのは日産と協業関係にある三菱だ。新型エクリプスクロスPHEV(車重1920kg)は、リアモーターに70kW/195Nm(フロントは60kW/137Nm)とさらに大きなリアモーターを積んでいる。
前後の駆動用モーターをフルパワーで常に使い続けるようなことはないとは思われるが、クルマの向きを積極的に変えていくにはリアへこれほどの大出力モーターを積む必要があるのだ。
■e-POWER 4WDは、今後の日産の秘密兵器
日産の4WD技術といえば、インテリジェント 4×4といったSUV向けのトルク配分制御に加え、アリアに搭載される「e-4ORCE」という新技術がある。
この「e-4ORCE」に採用されているトルク配分を行うヨーモーメントコントロール技術や、車体の揺動を抑え乗り心地をよくする制御技術は、モーターのトルクを緻密に制御することで旋回時のヨーモーメントを自在にコントロールしたり、上屋のボディモーションをコントロールしたりができる。これらの技術や得られた知見はe-POWER 4WDにも生かされていることだろう。
新型ノートの開発担当者によると、ルノーと共用である最新型プラットフォームの太い骨格と後輪用モーターのサイズアップによって、車両後部のフロアレイアウトがかなり難しくなったそうだ。しかしそのおかげで、E12に対してとてつもない進化を新型ノートは実現できたそうだ。
後続の『新型キャッシュカイ』、そして『新型エクストレイル』で本領発揮すると思われるe-POWER 4WD。このe-POWER 4WDは今後の日産の秘密兵器となるだろう。
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