■国土の約60%が積雪寒冷地域の日本
現状のEVの性能、現状のインフラ、現状のクルマの使い方では降雪地でEVを安全に使うことはなかなか難しいかもしれません。
2020年12月に起きた関越自動車道の立ち往生事例で私が最初に思ったのが「電気自動車が巻き込まれていないか?」ということでした。エンジン車はエンジンさえ回っていれば、暖房を使うことができます。もちろんEVも充電されていれば暖房を使うことはできますが、EVで暖房を使うのは非常に効率が悪いのです。
そして、もし電欠を起こしてしまったらほぼアウトでしょう。ガソリン車ならば、自衛隊がガソリンをジェリカンに入れて持ってきてくれることもあるでしょうが、EVはそう簡単にはいきません。JAFはEVの電欠に対応するための救援車を持っていますが、雪の高速道路で救援車が電欠EVにたどり着けるような状況なら、立ち往生が回復しているということです。
そこまでに何時間かかるのか? 何日かかるのか? が問題です。
今のEVの性能で、雪国においてEVが普及していくことは難しいと考えるのが普通です。「雪に閉じ込められるかもしれない」という可能性がある限り、そう簡単には普及していかないと考えられます。
ただし、限定的な使い方を前提にすれば、雪国でもEVは増えていくでしょう。
ひとつは夏タイヤとスタッドレスタイヤのように、冬と夏とでEVとエンジン車を使い分ける方法であったり、長距離と短距離でEVとエンジン車を使い分けるような方法です。
クルマ2台持ちとなるわけですから費用も余分に掛かるため、減税などを行なう必要があるでしょう。もちろん、雪国であっても雪に閉じ込められるようなことのない使い方、つまり除雪がしっかり行われる市内のみで使うようなクルマであれば、EVであっても問題はないでしょう。
■そもそもまだ充電器が足りていない
現実的な話をするなら、日本では非降雪地帯と降雪地帯での限定的な使い方でピュアEVが、降雪地帯ではPHVが普及していくと考えるのが順当だと私は考えます。
ただし、現在のEVの性能、現在のインフラでは(降雪、非降雪に関わらず)EVの普及には限界があるでしょう。まず、充電時間と航続距離の問題です。ガソリン車やディーゼル車なら5分の給油で何百kmも走れますが、EVではそこまで速い充電と航続距離が望めません。
また、高速道路などでは現在の急速充電器の数では足りないのです。
現在でも、高速道路で充電しようとすると、すでに充電をしているクルマがいることがよくあります。運が悪いときは、充電しているクルマのほかに順番待ちをしているクルマがいる場合もあります。この状態だと最悪1時間程度待たないと充電を始められず、充電が終わるのが1時間半後になってしまいます。
時速100km/hで走れるとして、150km分の移動ができないのです。
クルマの魅力は早く移動できることなので、1時間半の時間を浪費してしまうのはクルマ本来の魅力からはずれてしまいます。
さらにこのタイミングが「雪が降りそうな状況」だったら……どうでしょう。
5分でガソリンを入れて150km移動して雪の地域から脱出できたかも知れません、しかし1時間半の待機で雪に巻き込まれて身動きが取れなくなる可能性もありますよね。
理想論だけでは進めない現実は、そう簡単に取り除くことはできないと私は考えます。
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