■海運も増加した
巣ごもり需要でホームセンターやネット通販で販売される組立家具等の需要が増えた。これらはほとんど海外から海上コンテナで送られて来るため、コンテナ輸送船の需要が逼迫、世界的に運賃相場が高騰している。
海上コンテナは港で陸揚げされてから、コンテナの荷姿のままトレーラーに載せられ顧客に配達される。大井埠頭などのコンテナ港では連日、「海コン・トレーラー」の積み待ち・降ろし待ちの大行列が続く。
■あまりの忙しさに離職するドライバーも多い
こうした一部の業種のトラックドライバーのなかには、あまりの忙しさに離職する人もいる。残業が増えても給料やボーナスに反映されないためだ。忙しくても酬われない看護師の離職のニュースも耳にする。
医療従事者の緊張感、危機感はトラックドライバーのそれとは比べるべくもないが、わかる気がする。「仕事が欲しくても無い時代に、何を贅沢な」と思われるかも知れないが、流石に忙しいだけで希望が見えない状況が一年近く続くと、やって行けない。人は全員が使命感だけで仕事ができる訳ではない。
■「何でも屋」はつぶしが効く
前述のとおり、コロナ禍で荷物量が増えた業種、減った業種がある。運送会社は顧客や運ぶ品目がある程度決まっており、そう簡単には変えられない。
これらは「専属輸送」であり、反対に一般貨物を幅広く運ぶ「何でも屋」もある。「専属輸送」には、大手企業の物流部門を独立・分社化した「物流子会社」も含まれる。「物流子会社」の業績は親会社の製品の売れ行きに大いに左右される。
また、運送会社は下請けが多いというのも特徴だ。多方面から仕事を請け負い、リスクヘッジしている会社はこういう時には強い。
都内で「何でも屋」の小さな運送会社に勤めるHTさん(50)に最近の状況を聞いてみた。
「全体としては仕事が減っています。機械輸送がメインですが、納入先の工場の生産調整で、製造設備の納期が先延べになることもあります。他の下請け仕事はポツポツ入って来ます。ですが、政府の雇用調整助成金を使って休みになることも。まわりの会社では潰れそうだというところもあります」。
やはり「何でも屋」はこういう時には強い。
■硬直性打破し配置転換を
このように、運送業界の仕事は、全体でみればやや減った程度だが、業界内を細かく見てみると、非常に忙しい業種と暇な業種が混在する。暇な業種の人材やトラックをどうにか忙しい業種に配置転換できないものか。
また、荷物量が劇的に増減する物流施設間あるいは、フォークリフト、オペレーターの調整ができないものか。残念ながら、これらは今のところ上手く行っていない。
よほど大きな会社ならばドライバーの配置転換もできるが、小さな運送会社では持っている顧客も限られる。また、ドライバーを他社に出向させるという制度もほとんどない。
「物流」を意味する英語「ロジスティクス」の語源は「兵站(へいたん)」である。最前線への補給、後方支援の組み立てを表わす軍事用語である。災害時や緊急事態にこそ、物流には目詰まりが生じる。「物流」の語源が意味する物流の組み立てが必要なのではないだろうか。
河野太郎行政改革担当大臣がワクチン接種のロジスティクスを担う大臣に任命された。ワクチン接種には、ワクチンの確保、輸送、保管、会場設営、接種情報の管理などが必要だ。
河野大臣といえば、東日本大震災で仙台の精油所やタンクローリーが被災した時、当時野党だったが、タンクローリーで東北に石油を運ぶことに尽力したことを真っ先に思い出す。きっと成功させてくれるだろう。
今の物流には、ドラスティックな人材や機材、施設の再配置が必要だ。それには様々な物流トップの判断が必要。政府・国交省も動いてほしいと思う。一人一人のドライバーの頑張りだけでは乗り越えられない。
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