現役ドライバーが激白! コロナ禍でトラックドライバーの仕事は減っているのか?

 日本国内に新型コロナウイルス感染症が入ってから1年あまりが経った。感染の第一波、第二波を経験し、年末から年始の第三波では感染者が激増した。全国の1日あたりの新規感染者は一時7000人を超え、2回目の緊急事態宣言が発令され、さらに1ヵ月延長されることとなった。

 ワクチン接種が海外で始まっているが、国内のスケジュールは調整中。少し光明が見えてきたという段階だ。

 さて、この間、トラックの物流にはどのような動きがあったのだろうか。実際、トラック輸送は増えたのか、減ったのか? ベストカー本誌に寄稿している現役のトラックドライバー、長野潤一氏が報告する。

文/長野潤一、写真/長野潤一、Adobe Stock(トビラ写真:Adobe Stock@New Africa)、Adobe Stock@キャプテンフック(トラックが並んでいる写真)

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■コロナ禍でトラック輸送は減ったのか?

飲食店不況の影響を受け、おしぼり専門輸送の会社などでは苦戦が続く(東京都内で撮影・画像は加工しています)。写真提供:長野潤一

 コロナ禍の1年で日本経済は低迷したが、なかでも減ったのは、飲食業や関連産業が大打撃。おしぼりや食材の配達業務が激減した。反面、スーパーで食材を購入する人が増え、冷凍食品やインスタント麺の出荷量は増えた。

 マスク、ウエットティッシュ、うがい薬などのドラッグストア商品、巣ごもり需要の白物家電、家具、テレワーク機器、観葉植物なども増えた。

 ニッチだが、コンサートや自動車レースの機材を運ぶ運送会社もある。2020年3月の一斉休校、4月の緊急事態宣言の頃からは仕事がパタリとなくなり、秋には少し回復したという。

■ネット通販続伸で宅配便は増加

成田空港で納品を待つトラックの列.貨物機を飛ばしている特定の航空会社に貨物が集中している。写真提供:長野潤一

 在宅勤務や外出自粛でネット通販(EC)の利用数は増加、宅配便の取扱個数も伸びている。

 宅配最大手・ヤマト運輸の小口貨物取扱個数(「宅急便」「ネコポス」等の合計)は2020年4~12月で16億個弱。前年比15%増の伸びを示している。年間で最も荷物が増える12月に限ってみれば、取扱個数は2億5800万個余り(前年比18.6%増)。宅配ドライバーは大忙しである。

 国際航空路線も旅客は大打撃を受けたが、貨物は忙しい。コロナ前の国際旅客は、日本ブームや2020東京五輪に向けた盛り上がりもあり、年1割ペースで増加。新規路線開設が続いていた。旅客機の床底スペースを利用した「ベリー輸送(ベリーは“お腹”の意)」が盛んに行われるようになっていた。

 ところが、旅客機の多くが運休する事態になり、行き場を失った貨物は貨物専用機(フレーター)に集中した。

 旅客路線では世界の都市間を結ぶきめ細かいネットワークができていたが、巨大な貨物機ではそのようなネットワークは望むべくもなく、「とりあえず日本に送るから、あとはそっちでどうにかしてくれ」というように、成田か関空に荷物がドーンと来る。

 国内輸送はトラックで行われる。毎夜、多くのトラックが航空貨物を運んでいる。

 貨物が貨物専用機に集中することにより別の問題も発生した。貨物を積み降ろしする空港内の物流施設を「上屋(うわや)」と呼ぶが、飛んでいるエアラインが限られるため、特定の上屋にトラックが集中し、他は閑散としている。

 納品のトラックが列を作り、パレット1枚(1立方メートル程度の荷物)を降ろすにも数時間待つという非効率が発生している。列にトラックを取られてしまうため、より多くのトラックとドライバーが必要となる。

 上屋も荷物で溢れかえり、降ろすスペースもない。使われていない上屋を利用して、取り降ろし作業を分散するなど、対策を考えるべきである。

 また、輸出貨物では半導体関連の精密機械も増えている。世界的に5G対応機種の需要があり、半導体は携帯電話(スマホ)の心臓部となる。コロナ禍でも情報機器への需要は旺盛だ。

■海運も増加した

海上からも多くの荷物がやってくる。その荷物を各地に運ぶトレーラーも、今は忙しい状況だ

 巣ごもり需要でホームセンターやネット通販で販売される組立家具等の需要が増えた。これらはほとんど海外から海上コンテナで送られて来るため、コンテナ輸送船の需要が逼迫、世界的に運賃相場が高騰している。

 海上コンテナは港で陸揚げされてから、コンテナの荷姿のままトレーラーに載せられ顧客に配達される。大井埠頭などのコンテナ港では連日、「海コン・トレーラー」の積み待ち・降ろし待ちの大行列が続く。

■あまりの忙しさに離職するドライバーも多い

サービスエリアで仮眠をとるトラックドライバー。忙しくても酬われないという一面は、現在の医療従事者の状況と似ている

 こうした一部の業種のトラックドライバーのなかには、あまりの忙しさに離職する人もいる。残業が増えても給料やボーナスに反映されないためだ。忙しくても酬われない看護師の離職のニュースも耳にする。

 医療従事者の緊張感、危機感はトラックドライバーのそれとは比べるべくもないが、わかる気がする。「仕事が欲しくても無い時代に、何を贅沢な」と思われるかも知れないが、流石に忙しいだけで希望が見えない状況が一年近く続くと、やって行けない。人は全員が使命感だけで仕事ができる訳ではない。

■「何でも屋」はつぶしが効く 

コロナ禍では業種によって荷物が増えた、減ったの違いがある。その点、一般貨物を幅広く取り扱う「何でも屋」は影響が少ないとも言える

 前述のとおり、コロナ禍で荷物量が増えた業種、減った業種がある。運送会社は顧客や運ぶ品目がある程度決まっており、そう簡単には変えられない。

 これらは「専属輸送」であり、反対に一般貨物を幅広く運ぶ「何でも屋」もある。「専属輸送」には、大手企業の物流部門を独立・分社化した「物流子会社」も含まれる。「物流子会社」の業績は親会社の製品の売れ行きに大いに左右される。

 また、運送会社は下請けが多いというのも特徴だ。多方面から仕事を請け負い、リスクヘッジしている会社はこういう時には強い。

 都内で「何でも屋」の小さな運送会社に勤めるHTさん(50)に最近の状況を聞いてみた。

 「全体としては仕事が減っています。機械輸送がメインですが、納入先の工場の生産調整で、製造設備の納期が先延べになることもあります。他の下請け仕事はポツポツ入って来ます。ですが、政府の雇用調整助成金を使って休みになることも。まわりの会社では潰れそうだというところもあります」。

 やはり「何でも屋」はこういう時には強い。

■硬直性打破し配置転換を

稼働していないトラックやドライバーを忙しい業種に配置転換できれば理想的だが、現実には難しい側面がある

 このように、運送業界の仕事は、全体でみればやや減った程度だが、業界内を細かく見てみると、非常に忙しい業種と暇な業種が混在する。暇な業種の人材やトラックをどうにか忙しい業種に配置転換できないものか。

 また、荷物量が劇的に増減する物流施設間あるいは、フォークリフト、オペレーターの調整ができないものか。残念ながら、これらは今のところ上手く行っていない。

 よほど大きな会社ならばドライバーの配置転換もできるが、小さな運送会社では持っている顧客も限られる。また、ドライバーを他社に出向させるという制度もほとんどない。

 「物流」を意味する英語「ロジスティクス」の語源は「兵站(へいたん)」である。最前線への補給、後方支援の組み立てを表わす軍事用語である。災害時や緊急事態にこそ、物流には目詰まりが生じる。「物流」の語源が意味する物流の組み立てが必要なのではないだろうか。

 河野太郎行政改革担当大臣がワクチン接種のロジスティクスを担う大臣に任命された。ワクチン接種には、ワクチンの確保、輸送、保管、会場設営、接種情報の管理などが必要だ。

 河野大臣といえば、東日本大震災で仙台の精油所やタンクローリーが被災した時、当時野党だったが、タンクローリーで東北に石油を運ぶことに尽力したことを真っ先に思い出す。きっと成功させてくれるだろう。

 今の物流には、ドラスティックな人材や機材、施設の再配置が必要だ。それには様々な物流トップの判断が必要。政府・国交省も動いてほしいと思う。一人一人のドライバーの頑張りだけでは乗り越えられない。

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