■日産 GT-R 現行型登場2007年9月
いっぽう、パフォーマンス志向のクルマはそんなメンド臭いことを考える必要はなく、一切のしがらみなしに性能向上に邁進すればいいクルマになる。その代表例がGT-Rだ。
GT-Rは初代ハコスカからしてレース用ホモロゲモデル。中興の祖となったR32GT-RもグループAで無敵を誇るなど、とにかく走りでライバルを圧倒することがその存在意義みたいなクルマ。現行R35がニュル最速にこだわっていたのも、最速マシンを目指しているからに他ならない。
この価値観なら「最新モデルがベストGT-R」と迷いなく言える。
個人的には、R32GT-Rのデビューに立会って試乗会で初めてそのステアリングを握った時の感動は忘れがたいが、たぶんそれは思い出バイアス。仮にぼくがいま20代だったとしたら、ぜったいR35のほうが乗って感動すると思う。
■ホンダ シビックタイプR 現行型登場2017年9月
同じパフォーマンス志向でも、目指す水準が「クラス最速」だとちょっと判断に迷うところがある。
最新のシビックタイプRはFFニュル最速を競うなどパフォーマンスはダントツ歴代最高。じっさいに乗っても強烈なトラクションとリアのスタビリティに圧倒されるし、トルク特性の素晴らしさも特筆もの。エンジンもシャシーも文句なく世界トップレベルだ。
ところが、高性能ながらあまりにも扱いやすいゆえに、逆に「初代シビックタイプRも良かったよなぁ」という記憶が蘇ってくる。
1.6L、VTECの高回転域の叫び。軽くコンパクトなボディによるキビキビ感あふれるフットワーク。まさに“ホットハッチ”という表現がふさわしい軽やかででエキサイティングなドライビング感覚。
GT-Rじゃ最初からパフォーマンスを100%引き出そうなんて気にならないが、シビックタイプRだとちょっと振り回してみたくなる。
そうなると、日本のワインディングでは最新のシビックタイプRでもオーバースペックで、初代の軽快さに一票を投じたくなってしまうのだ。
■スバルWRX STI 現行型登場2014年7月
スポーツカーがブランドを確立するにはパフォーマンスだけでは不十分で、ある種の“物語”が必要。
たとえば、WRX STIだったらそれはWRCチャンピオンというタイトル。これがあるとないとじゃ大違い。モータースポーツにおける勝利の記録は、このクルマを所有する喜びのひとつになっている。
そうなると、ランエボと熾烈な戦いを演じていたGD系後期あたりが、WRXの最高に輝いていた時代ということになる。個人的にもペター・ソルベルグがチャンピオンを獲った2003年モデルの印象は未だ鮮烈だ。
最新のWRXはいまや高級スポーツAWDといった風情で、モータースポーといえばニュル24時間に出る程度。すっかり落ち着いちゃった感があるのがちと寂しい。
業績絶好調のスバルだけに、そろそろWRCに復帰する素ぶりくらい見せてもいいと思うのだがいかがだろう。
■スズキ スイフトスポーツ 現行型登場2017年9月
最後に、200万以下で変えるような庶民のスポーツモデルこそ「最新モデルが最高」であってほしいが、スイフトスポーツは100点満点でその命題に応えたクルマ。自信を持って歴代ベストの傑作といえる。
1.4Lターボのパワフルな走りに、FFスポーツのお手本といっていい素直なハンドリング。それがエントリー180万円代で手に入るんだから文句なし。
この価格レンジのFFスポーツとしては、日本一どころか世界一といっても過言ではないと思います。
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※鈴木直也氏による勝敗表:最新型3勝(ロードスター、GT-R、シビックタイプR)/歴代型2勝(WRX STI、スイフトスポーツ)
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