ホンダが、2021年2月19日の取締役会で、八郷隆弘社長の後任に三部敏宏専務を昇格させる人事を決定した。現在の八郷社長も研究畑からの選出だったが、次の三部敏宏専務もエンジン開発部門などを渡り歩いてきた人物のようだ。
現在日本市場は小さいクルマがメインとなっていて、Cセグ以上のクルマはあまり元気がないホンダの現状は、新社長就任で変わるのか!? ホンダはこのまま日本を見放そうとしているのか? その今後の動向について考えていきたい。
文/国沢光宏
写真/HONDA、編集部
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■ホンダ八郷体制の6年間を振り返る
ホンダは八郷さんが2期6年の任期を満了し、研究所社長の三部さんを次期社長に就任すると発表した。
クルマ好きからすれば「今後のホンダがどうなるか?」ということを知りたいと思うだろう。もちろん三部さんの方針についてわかっていることは少ないため予想は難しいけれど、現在ホンダが抱えている課題について考えてみたいと思う。
その前に八郷体制の6年間を振り返る。この間、ホンダで進行したのは独立採算制の強化です。ひと昔前まで「北米・日本・欧州」の3極体勢を取っていたホンダながら、八郷さんの前任である伊東さんが、中国と東南アジア&大洋州、南米という6極体勢とし、それぞれニーズのあるクルマを作って行こうという積極姿勢に出た。
結果、収益率の低下になってしまう。「売れても利益出ない」ということ。八郷さんは「6極でそれぞれ利益を出さないとダメだ」。結果、ホンダという大きいチームが6つの小さい独立採算のチームに分かれることに。どういうことになったか? 一番わかりやすいのが、日本で生産してアメリカに輸出しているクルマの価格です。
常識的に考えると、日本で生産すれば日本の方が安価に売れる。実際、ホンダ以外そうなっているし、ホンダも以前は日本生産車なら日本のほうが安い値付けだった。されど「地域毎に採算を取れ」となれば、販売台数少ない地域は開発コストを販売価格に上乗せしなくちゃならない。『クラリティ』など日本で生産しているのにアメリカよりずっと高価!
『CR-V』や『インサイト』などもアメリカの価格より日本の価格のほうが圧倒的に高い。アメリカで価格競合車のトヨタ『RAV4』や『プリウス』と比較できないほど高い価格設定になってしまった。当然ながら売れるワケない。過去ホンダで成功したクルマを見ると「競合車より魅力的でいながら競合車より割安」。初代のホンダ『ステップワゴン』や『オデッセイ』『フィット』です。
今や軽自動車とコンパクトカーを除くホンダ車は全滅状況。同じく販売台数少ないため割高になってしまっていた欧州もダメ。直近を見ると北米と中国という2極で大半の利益を出している企業です。ただ2極の利益が好調のため、ホンダ全体で見ると悪くない。もっといえば、現在のホンダなら北米と中国以外、不要ということになる。
会社としての業績は良いので八郷さんも6年満期の円満引退ということになった次第。けれど現状を続けていくと、欧州は撤退を余儀なくされ、日本も縮小均衡。東南アジアと南米も中国など新興勢力に押され気味。三部新体制がこの流れをどうするのか、大いに興味深いところです。現時点の方向性からすれば「今のまま」か?
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