軽ければいいというものではない! 適材適所が必要なホイールのホントのところ

軽ければいいというものではない! 適材適所が必要なホイールのホントのところ

 なぜホイールは軽いほうがいいと言われるのか? みんなが軽いほうがいいよ……と勧めてくるからと購入した人もいるのではないだろうか。しかし、この重さを気にしないと、実は乗り心地にも大きく影響する大切なアイテムなのだ。

 軽量化すると、どのようなメリット、デメリットがあるのか? また乗り心地を重視したい人は純正同等の重量のホイールを選んだほうがいいのか? 交換する際の適切な選び方のポイントなど、ホイール選びについて、レーシングドライバーであり自動車評論家の松田秀士氏が解説する。

文/松田秀士
写真/Adobe Stock(chihana©@Adobe Stock)、HONDA、編集部

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■ホンダZに履かせたアルミホイールの記憶

 最近のクルマ、ほとんどがアルミホイールを履いていますね。理由は軽量化です。

 その昔、筆者が若者だったころの1970年代は鉄チンと呼ばれた鉄ホイールが主流でした。お洒落なモデルだと、そのままでは無骨なデザインなので樹脂製のホイールカバーなるものが付いていました。

 しかし、ファッションの国イタリアなど欧州では、早くからお洒落なデザインのアルミホイールが売られていたのです。クロモドラ、コスミックといったブランドのアルミホイールが輸入されるようになり、国産メーカーも登場しアルミホイールバブルが日本を席巻しました。

 RSワタナベ、ハヤシのストリート(ハヤシレーシング)、SSR(スピードスターレーシング)などが国産代表例です。

 筆者は当時ホンダ『Z』という軽自動車に乗っていたのですが、当時の軽自動車はすべて10インチ。軽自動車用のアルミホイールはまだ普及しておらず、ハヤシレーシングが「FL500」というフォーミュラカー用に開発したレース用のアルミホイール(10インチ)を購入して履かせていました。これにダンロップ「G5」というセミレーシングタイヤ、今でいうSタイヤを組みあわせていました。

1970年に発売されたホンダ『Z』通称「Z360」。また、リアウィンドウの形状から「水中メガネ」という愛称でも呼ばれていた。筆者はこのクルマに当時としては時代を先取りしたアルミホイールを装着していた
1970年に発売されたホンダ『Z』通称「Z360」。また、リアウィンドウの形状から「水中メガネ」という愛称でも呼ばれていた。筆者はこのクルマに当時としては時代を先取りしたアルミホイールを装着していた

 初めてそのホイール&タイヤで走り出した時の感動は今でも覚えています。ステアリングを切り込んだ瞬間にノーズが向きを変え、とにかく軽快でホンダ『Z』がまるでベツモノになったことが衝撃的でした。今思えば、これはバネ下の軽量化が吉と出た典型だったと思います。

 ダンロップ「G5」はラジアルではなくバイアスタイヤだったこともあり、ハヤシのアルミとの組み合わせで相当軽量化ができたのだろうと思うのです。それと乗り心地が悪くなることは覚悟していたのですが、意外にもかえってよくなっていたのです。まぁ、その頃は乗り心地のことはどうでもよくて、ハンドリングのステージが上がったことの喜びでイッパイ! 峠を走り回っていました。

 その後、レーシングドライバーとなり自動車評論家となった今、何も考えず走り回っていた頃の疑問に答えられるようになりました。

次ページは : ■ホイールの軽量化による影響

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