■スタイリングはやや古めかしい
フランクフルトショーで初めて見たMID4のスタイルは率直に言ってあまり感心したものではなかった。日産もその点は認めているフシもある。ひと言でいってやや古めかしいのだ。
オーソドックスといえばオーソドックスだが、少なくとももはや7年以上を経たフェラーリ308GTBや最新の328GTBにフレッシュさでおよばない。第一にプロポーションが古い。もう少しキャビンを前に移行させ、Aピラーも前に出してドライバーの着座位置を前にしたい。
また後部のデザインはミドシップカーにとって最も難しいところだが、ピニンファリナがずっと以前にやり始めた手法から一歩も出ていない。
なろうことなら、このへんに新しいやり方を示して、イタリアのデザイナーたちをオッと驚かせてやりたかったところだ。
テストコースを走るMID4はごく普通に見える。全高1200mmをもっと低く見せてアピールしないのは損だ。スーパーカーのフォルムは低く、地を這うようでないとムードがでないが、それがないのだ。
内装もオーソドックスである。もう少しイタリアンタッチでいいと思う。この手のクルマは思いきって斬新で進歩的なものでもいいと思う。むしろこういうクルマこそグッドデザインのエレクトロニックディスプレイでもいい。
■軽快な走りのハンドリングマシン
HICAS付きの4WD、それも前37、後63というトルク配分を持つフルタイム4WDとあっては、そのコーナリングのポテンシャルはいやが上にも高まる。
結論からいうとこのMID4は、現状でもよく曲がり、かつファンなミドシップスポーツである。かつて私はHICASではないが、プジョー205ターボ16に乗ったが、そのフィールにとてもよく似ている。
スローインを守るが、セカンドでヘアピンに入り、そのまま相当乱暴にスロットルを開けると、MID4はインベタのままで、スムーズにコーナリングし、しかもかなり速く曲がっていく。
そのままアクセルを踏み込んでいけば、最後にはテールアウトし、スティアリングを少し当てる必要が生じるが、それとて決して大きくはない。
MID4のコーナリングアビリティはかなり高く、最後のコーナーをサードで加速しながら走る時はちょっとしたものである。
むろん、スティアリングはシャープで、切ると同時にノーズを内側に向ける。4WDだけに直進性もよさそうだ。ブレーキもさすが4WDというべきレベルで素晴らしいフィールだ。グッと腰を落として後から効く感じは多くのミドシップカーと同じくとてもいい。
MID4のハンドリング、ロードホールディングは現在でもかなり評価できると思う。まだパワーが100%でないこともあるが、軽快なミドシップカーというレベルにある。
■MID4が目指すところ
MID4はすでにかなりの完成度にある。コンパクトなボディとフルタイム4WDはラリーを連想してもおかしくない。そのことと関連してターボを付けるか付けないかという問題も重要だろう。もしツウィンターボを与えれば優に300馬力は超えるだろう。
櫻井さんは“老人でも星野(一義)さんでも楽に速く走れるクルマを目指す”という。それは間違いじゃない。しかし、問題はその速さだ。誰でも200km/hで走れるクルマはメルツェデスでもアウディでもある。
ならばMID4はどのレベルを実現してくれるのか? 250km/hなのか、ポルシェ956のごとく300km/hなのか? とにかくそのスピードが高ければ高いほどMID4の価値は上がり、意味もある。
◎日産 MID4 主要諸元
全長:4150mm
全幅:1770mm
全高:1200mm
ホイールベース:2435mm
車重:1230kg
エンジン:V6 DOHC 2960cc
最高出力:230ps/6000rpm
最大トルク:28.5kgm/4000rpm
トランスミッション:5MT
サスペンション:前後ストラット
駆動方式:センターデフ式フルタイム4WD
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