クルマはハッキングされるのか? 自動車のコンピュータ化の厄介な事情と懸念

■ハッキングの可能性もあるがクルマもネットとつながらなければ……

 さて、前置きが長くなっちゃったけど、限定されたエリアにコンピュータがいっぱい存在する環境といえば、いまやクルマがその最たるもの。

 最近は普通のクルマで40〜50個、高級車になると100個以上のCPUを搭載している。まさにコンピュータネットワークそのものだよね、コレは。

 ところが、じつはクルマの中のコンピュータネットワークは“カオス”といっていいグチャグチャな状態にある。物理層も通信プロトコルも何種類も存在して、インターネットみたいにシンプル/エレガントに統一されていない。

 代表的な車内ネットワーク規格には、ボッシュが決めたCAN(Controller Area Network)、ドイツ御三家を中心に策定されたLIN(Local Interconnect Network)、CANの改良版FlexRayがある。

 これ以外にもトヨタなどメーカー独自の規格が存在していて、専門家でないと正直よくわからない状態なのだ。これには、クルマのコンピュータ化が「建て増し建て増し」で追加されていった、という歴史が大きく影響している。

 クルマにコンピュータが搭載されたのは、70年代にボッシュが電子制御燃料噴射を開発したのがきっかけ。

 そこから始まって、AT、ABS、ESP、インフォテイメント系、テレマティクス系といった機能を手当たり次第追加していったため、とても伝送メディアや通信プロトコルの統一なんてやってる余裕がなかったという経緯がある。

1976年のメルセデスベンツに搭載されたボッシュのABS。現代から見るとかなりシンプルに見える
1978年のメルセデスベンツに搭載されたボッシュのABSユニット。現代から見るとかなりシンプルに見えるが、この時代からすでに”電脳化”は始まっていた

 また、クルマの電子制御化は安全問題と直結するため、ネットワークも確実性が何より優先される。

 TCP/IPは基本的に「通信に失敗したらやり直せばいいじゃん」というアバウトな(リアルタイム性より冗長性を重視した)プロトコルなので、これがクルマの制御に不向きだったという事情もある。

 しかし、最近ここに変革の波が押し寄せてきている。

 自動ブレーキの普及で、安全系のCPUは車載カメラやミリ波レーダーなどから送られてくる大量のデータを処理する必要に迫られているし、クルマのコネクテッド化でインターネットへの常時接続も待ったナシ。

 クルマの車内ネットワークは、データ伝送帯域/通信プロトコルともに大きな変革を迫られているのだ。

 そうなると、もっとも素直な答えは「インターネットと同じTCP/IPとイーサネットを採用する」という対応。じっさい、すで欧州車ではそれが始まっているし、国産でも新型リーフで初めて車内イーサネットが採用されたことが明らかになって話題を呼んでいる。

 もちろん、前述のとおりリアルタイム性がイマイチだとか、よく知られているプロトコルだけにハッキングが怖いとか、TCP/IP+イーサネットにも欠点はあるのだが、クルマの車内ネットワークだけがずっとガラパゴス状態でいるわけにもいかない。

 ハッキングに関してはTCP/IPみたいな業界標準のプロトコルを使えば使うほど、外部からの攻撃は容易になるのは事実だけど、同時にプロテクト技術を磨く企業も多くなる。

 攻撃が増えれば防御もビジネスになりやすいのもまた事実。いたちごっこだけど、カーメーカーとしてはセキュリティ技術を高めていくしかないのが現実だと思う。 

 やっぱり、中長期的にはクルマのネットワークもインターネットと同化してゆく方向なのでしょう。

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