■ディーゼルが強みのマツダはどうする!?
では、マツダはこれからディーゼルエンジンをどう育てていくのだろうか?
近年の、日本を含めた世界各地でのマツダ急成長の経緯を振り返ってみると、その原点はマツダが第五世代と呼ぶ2012年登場の初代CX-5からのSKYACTIV戦略にある。周知のとおり、内燃機関の燃焼について、新たなる理論の上に独自の技術を量産したものだ。
最大の特長は、排気ガス浄化に対する補機類の少なさにある。特にSKYACTIV-Dではその効果は大きく、当時ディーゼルエンジンのシェアが高かった欧州市場では、欧州メーカーがマツダを今後の脅威として捉えていた。
ところが、前述のように欧州での電動化に対する法規制の強化が2010年代から2020年代に向けて一気に進み、各国でのディーゼル車比率の低下傾向が顕著となるなか、マツダの立場も変わり、マツダとして次の一手が必要となってきた。
そうした中で、満を持して導入したのがSKYACTIV-Xだ。筆者はドイツのマツダ開発拠点で開催された、SKYACTIV-Xの報道陣向け世界試乗会に参加し、プロトタイプをアウトバーンで走行させ、”ミスターSKYACTIV”である人見光夫氏(現:シニアイノベーションフェロー)から新たなるSKYACTIVにかける熱い想いを聞いた。
SKYACTIV-Xは、超希薄な状態で理想的な燃料を実現する技術であり、そのためには事実上のスーパーチャージャーであるクランク軸から動力を得るエアコンプレッサーを装着している。それでも、低回転域でのトルクが不足するために、マイルドハイブリッドのように電動モーターも装着するという、マツダならではの特殊なレイアウトとなっている。
販売面で見ると、欧州の一部では税制優遇措置などの効果もあり、『CX-30』などでSKYACTIV-Xの需要は高い。一方で、日本ではSKYACTIV-GやSKYACTIV-Dとの価格差から、SKYACTIV-Xの売上が伸び悩んでいる。
さらに直近では、日本でも政府主導の2050年カーボンニュートラルの動きが活発化し、菅義偉首相が2021年通常国会の施政方針演説のなかで「2035年までに、軽自動車を含めた100%電動化」を表明した。
こうなると、マツダとしても電動化戦略の変更が必須となる。
この点についてマツダの丸本明社長は「国や地域による、電力の供給状況に応じた電動化を進めるが、市場の変化を考慮して動きを早める」と説明してきた。アメリカでは導入から2年を前にCX-5のディーゼルモデルの販売を終了する。
EVについてはMX-30を2020年夏から欧州で先行発売し、日本ではマイルドハイブリッド、そして2021年1月からEVモデルを発売した。となれば、SKYACTIV-Dについても動きはあるのだろうか?
この点について、2020年12月にマツダR&Dセンター横浜(横浜市神奈川区)で実施されたCX-5商品改良の報道陣向け試乗会で、筆者としてe-SKYACTIV-Dの可能性を感じた。
同市場では、SKYACTIV-XとSKYACTIV-Dを市街地と首都高速での同じルートで走り比べたが、サスペンションの改良やGベクタリングコントロールプラスなど、走りの制御の進化を実感した。
それと同時に、SKYACTIV-Xによる、電動モーターアシストの効果を再確認し、「SKYACTIV-Dはマイルドハイブリッド化することで、走りの魅力がさらに深まる」ことも改めてわかった。
試乗後、広島本社のエンジン開発担当者とオンラインで意見交換した際、e-SKYACTIV-D実現の可能性について聞いた。
これに対しては「ディーゼルでも2000rpm以下の回転域ではモーターアシフトが有効であることは十分承知している。課題は、やはりコストだ」と指摘した。
マツダは2022年にも、マツダがラージ商品群と呼ぶ『マツダ6』や『CX-5』向けのプラットフォームをFR化する。その中で縦置きガソリンPHEVの量産化が決まっている。そうなると、e-SKYACTIV-Dは『マツダ3』や『CX-30』などスモール商品群での適合を考えることになるのだろうか?
いずれにしても、マツダとしては当面は現行SKYACTIV-Dの改良を進めながら、ディーゼル電動化への道筋をどこかの最終決断することになる。
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