F1デビュー戦でいきなり入賞!! ルーキー角田裕毅の実力と存在感

■Q1から大物の片鱗を見せつける

開幕戦時点で弱冠二十歳の角田裕毅。風貌にもまだあどけなさが残る
開幕戦時点で弱冠二十歳の角田裕毅。風貌にもまだあどけなさが残る

 各チームと各ドライバーの実力が見えてくる大事な初戦のQ1。

 なんと、ここで角田選手が、レッドブルのファーストドライバーであるマックス・フェルスタッペンに次ぐ、2位タイムを叩き出します!おそらくこの瞬間、世界中のF1ファンがざわついたことでしょう。

 まだQ1とはいえ、F1チャンピオンの座を7回も獲得しているルイス・ハミルトンよりも、ルーキーの角田選手が速いタイムを叩き出したのですから。

 そのざわつきが収まらないまま、Q2へ。ここでアルファタウリは、ミディアムタイヤでアタックする作戦に出ました。

 F1では、Q2を突破したタイヤを決勝のスタートタイヤに使うという仕組みになっています。タイヤは、ソフトタイヤ/ミディアムタイヤ/ハードタイヤの3種類から選ぶことができ、左から「グリップは高いが劣化が早いタイヤ」で、右に行くほど「グリップは低いが劣化が遅いタイヤ」という特性を持っています。

 予選では、1発のタイムが速いソフトタイヤを選びたいところですが、決勝まで持ち越して何十周もすることを考えると、ソフトタイヤではレース展開が厳しくなることが多々あります。

 そのため、バーレーンのQ2では、上位のメルセデスやレッドブルも、ミディアムタイヤでのアタックを決行。中位チームであるアルファタウリも、今年は大幅にマシン性能が向上したとはいえ、ミディアムタイヤで突破するのは至難の技。

 角田選手もミディアムタイヤでの予選アタックに苦戦し、結果、Q2は13位で敗退。決勝は13番手からのスタートとなりました。

■ホンダラストイヤーのレッドブルの影で……

通算4度のタイトルを獲得しているセバスチャン・ベッテルのマシンをオーバーテイク。ベッテルも驚いたに違いない
通算4度のタイトルを獲得しているセバスチャン・ベッテルのマシンをオーバーテイク。ベッテルも驚いたに違いない

 そして、決勝当日。2021年のF1の決戦の火蓋がついに切って落とされました。スタートの際、角田選手に注目して見ていると、どうでしょう。スタートに失敗したようで、15番手まで順位を下げています。「やっぱりルーキーには難しいのか……」。

 その傍では、マックス・フェルスタッペンがポールポジションから見事なスタートを決めて、集団を先行しています。今年はホンダラストイヤーということもあり、「レッドブルには絶対チャンピオンを獲得してもらいたい!」その一心から、ついマックスのレースの行方に目移りしてしまいます。

 約20周ほど経過して、王者ハミルトンとマックスの戦いに見入っていると、カメラがふいにアルファタウリのマシンを映しました。

 そこには、後ろから猛追している角田選手の姿が。13番手まで順位を上げた角田選手は、あるマシンに食いかかかっています。そのマシンを駆るのは、4度のタイトルを獲得している、セバスチャン・ベッテル。

 角田選手がチャンピオンに対して、オーバーテイクを仕掛けるシーンを見て思わず涙が滲みました。「彼は本当に世界で戦っているんだ!」と。

 さらに、その前には、歴代チャンピオンであるフェルナンド・アロンソやキミ・ライコネンも……。角田選手はそれを物ともせず、チャンピオンたちを追撃し、どんどん順位を上げ、ついにポイント獲得圏内の10位まで到達しました。

 そして、ファイナルラップ。9番手のランス・ストロールを目の前に捕らえ、1コーナーでオーバーテイクに成功!

 特に角田選手の強みは、ブレーキングの上手さと、それによってタイヤを長く戦える状態にしておけるところ。F2時代も、最終周に近づくにつれて勢いを増し、オーバーテイクを重ねる角田選手に何度もシビれさせられました。「それがF1にも活きている!通用する!」と感じた瞬間でした。

 そして、角田選手はデビュー戦で9位入賞を果たしました。

次ページは : ■本人は結果に不満!? 次戦を期待せずにいられない!!

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