満を持して日産がリリースしたセレナe-POWER。世界的にクルマが電動化に向かっているなか、リーフという純EVをラインアップに持ちながら、従来のエンジンで発電し、モーターで駆動するという独自のスタイルも確立させようとしている。
しかも試乗したジャーナリストはいずれも高評価を下している。果たしてe-POWERってそんなにいいものなのか? しつこく聞いてみた。ちなみにセレナは243万5000円から、セレナe-POWERは296万8920円から。価格差もそこそこありますな。
文:鈴木直也、国沢光宏、渡辺陽一郎/写真:ベストカー編集部
ベストカー2018年5月10日号
■従来からある技術を新鮮に見せた日産の勝ち
【新鮮な走りっぷりにユーザーが響いた】鈴木直也
ノートe-POWERが登場した時、ライバルメーカーの技術者は「あれでOKだったんだ!」と絶句したという。
ノートe-POWERが採用しているシリーズハイブリッドは、昔から知られていた技術。ライバルはみな、高速走行時の効率を上げるにはあのまんまじゃダメ、そう考えていたからだ。
ところが、日産は「1ペダルドライビング」という新しい切り口で、シリーズハイブリッドに新たな魅力と付加価値を与えるのに成功した。
つまるところ、最終的にクルマを評価するのは買ったユーザー。ノートe-POWER、セレナe-POWERの走りは、アクアを含めた同クラスのライバルとはまったく異なるユニークなもの。その新鮮な走りっぷりと優れた燃費性能を、多くのユーザーが熱烈に支持したわけだ。
エンジニア目線でベストにこだわるより、本当にユーザーが欲している機能に絞り込む。そのコンセプトで成功したのがノートe-POWERだったと思います。
【巡航速度が低いシーンではこの形が主流になる】国沢光宏
私はノートの時からe-POWERはイイと高く評価している。
そもそも最新の技術を使ったパワーユニットとして、これ以上の方式はないとさえ思う。もう少し正確に書けば、バッテリー搭載量を2倍くらいにして、エネルギーの出し入れをさらに大がかりに行うことにより、一段と燃費がよくなるだろう。
そのうえで、発電専用のパワーユニットを組みあわせてやると、これまた一段と効率上がっていく。ノートもセレナも、シリーズハイブリッドの発展段階にあると考えてよかろう。
ちなみにe-POWERだけでなく、ホンダの2モーター式や、アウトランダーPHEVもまったく同じシリーズハイブリッド。
日本やアジアに代表される巡航速度が低くて渋滞する交通モードでは今後シリーズハイブリッドが主流になる可能性すら出てきた。
【ユーザーの環境によっても評価は分かれる】渡辺陽一郎
e-POWERではアクセル操作で速度を自由に調節できる機能が注目されるが、見方を変えれば不自然といえるだろう。
モーター駆動だから可能な制御で、愛車がe-POWER、仕事で使うのがノーマルエンジン車の場合、後者の運転時に減速タイミングが遅れる心配がある。
そこでDレンジで走ると、普通のハイブリッドが採用するフットブレーキの協調回生制御が行われない。こうなるとDレンジは燃費の節約効果が薄れる。
ノートe-POWERの好調な販売にも注釈が必要だ。今はティーダが廃止され、キューブは安全装備が貧弱だから、上質な小型車に対する需要がノートe-POWERに集中した。
またセレナe-POWERのCMは最悪だ。ナレーションは「電気自動車の新しいカタチを充電いらずで。さらに自動運転も」。危険を招く嘘はやめてくれ!!
【編集部の判断】
日産のe-POWERの独特な運転感覚を是とするか非とするか、というところで結論が決まるようだ。従来のクルマの運転感覚にこだわらなければe-POWERは、これほど魅力的なクルマはない、ということになるのだろう。
これは純粋なEVの走行感覚が是なのか非なのかを言い合うのと同じ。ヒューンという強烈な加速とともに静かに走るクルマにすぐに馴染めた人ならアリだろう。
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