■販売促進の手段としては逆効果!?
ところが今は違う。まずは前述のとおり内外のモーターショーや東京オートサロンに新型のプロトタイプを出店したり、あるいはボディの一部をウェブサイト 見せたりする。
この時点で従来型の売れゆきは下がり始め、新型に対する関心は高まるが、価格や発売時期は不明なことも多い。
例えばエクストレイルの姉妹車となるローグやアウトランダーの新型は、すでに北米では発表された(エクストレイルも4月12日に上海モーターショーで公開)。それなのに国内については、新型の発売スケジュールなどを販売店に尋ねてもわからない。
今はインターネットが普及して海外の情報も入手できるから、どこかの国や地域で新型を披露すれば、それはティザーキャンペーンと同じ効果を発揮する。それなのに発売に向けたスケジュールがわからないと、欲しいユーザーは困惑する。
特に今は新車需要の80%が乗り替えに基づくから、多くのユーザーは今使っている愛車を下取りに出して新車を買う。そのタイミングは、ムダを抑えるために車検期間の満了に合わせることが多い。
そうなると欲しい新型車の発売時期が早ければ、愛車をそのまま下取りに出して、新車に乗り替えられる。逆に遅ければ愛車の車検を取り、しばらく使った後で新型車に乗り替える。
海外のプロトタイプの披露を含め、ティザーキャンペーンやそれに準じた販売促進をするなら、発売のスケジュールもハッキリさせるべきだ。そうしないとユーザーは購入計画を立てられない。
また今のような従来型がフェードアウトして、いつの間にか新型車を売り始める方法では、先に述べた新発売のインパクトも得られない。今はクルマに対する関心が下がっているから、新型車がますます冷めた目で見られてしまう。
発表前4月中旬頃のヴェゼルは新型を売っているのか、従来型なのかわからない状況だった。この時、メーカーのホームページに新型の価格は掲載されず、ティザーキャンペーン中であることが表記される。
それなのに販売店では新型ヴェゼルを3月5日から受注して、3月中からメーカーへの発注も増えていた。
販売店によると「新型ヴェゼルを4月中旬に契約しても、納期は大半のグレードが2カ月半から3カ月を要する。最上級グレードのe:HEV・PLaYは、パノラマルーフなどを装着する関係もあり、4月中旬の契約でも納車は2022年にズレ込む可能性が高い」という。
これではホンダの販売店と付き合いのないユーザーが発売後に出向いても、長期の納車待ちを強いられる。事情を尋ねると「2カ月近く前から受注していますよ」といわれ、ホンダへの不信も強まる。
ほかのメーカーも同様で、今はティザーキャンペーンが販売促進に繋がらず、むしろ逆効果になっている。
■ティザーキャンペーンの意義は? メーカー担当者にズバリ聞く
それならなぜ、ティザーキャンペーンを実施するのか。メーカーの商品企画担当者は以下のように述べた。
「ティザーキャンペーンや予約受注を早めに開始する一番大きなメリットは、その車種の売れゆき、売れ筋グレード、ボディカラーなどの情報を早い段階で把握できることだ。従って需要予測を見誤る心配もない。
また最近はインターネットが普及したから、フルモデルチェンジが近づくと、いろいろな情報が飛び交う。誤った情報が一人歩きする心配もあるので、メーカーからの正確な情報をなるべく早く公開したい意図もある」。
要はメーカーの都合だ。今は大半の日本車メーカーが海外の販売比率を80%以上に高め、ホンダも2020年の海外比率は86%だった。日本で売られるのは世界生産台数の14%に過ぎない。
その結果、国内市場を分析する能力も下がった。以前は新型車の需要をほぼ正確に予想できたが、今は間違える。予想外の外装色が人気を高めて納期が伸びたり、売れると予想したグレードが低調で在庫が生じたりする。このリスクを避けるために、ティザーキャンペーン期間中に情報を集め、ユーザーを待たせている。
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