■佐川急便が導入する中国製EVの波及効果
また、現行リーフの40kWhと62kWhという選択肢があるように、軽乗用EVでも、必要とする走行距離と、購入予算の関係から、バッテリー性能の選択肢があれば、日常の足として利用されることの多い軽乗用EVをより安く買える機会が生まれる。
そして自宅で充電すれば、電気代はガソリン代の半額以下で済むだろう。そうなると、市場の30~40%を占める軽自動車が一気にEV化する可能性も出てくる。
日本では、一昨年の東京モーターショーで日産自動車が参考出展したIMkが、いよいよ来年あたり市販される可能性がある。同時にまた、提携関係にある三菱自からも軽乗用EVが売り出されるだろう。その時、価格がいくら下がるかが見ものだ。
トヨタが超小型EVとしてシーポッドを法人や自治体向けのリース販売を開始し、来年には一般消費者へも販売を開始する予定だが、その価格動向も見逃せない。シーポッドは現在Xグレードで165万円するが、軽EVがそれに近い価格で販売されたら、値下げが必要になるだろう。
佐川急便で業務用に限定しながらも、中国製EVが国内を走るようになれば、その価格が国内の軽EVや超小型EVの価格に影響を及ぼすのは間違いない。
中国製品に対しては、性能や品質を低く観がちな傾向もあるが、いざ現車を見てみなければわからない。少なくとも、YouTubeで基になるのではないかと思われるEVの動画を見ると、価格に見合った性能や品質を備えていそうに思える。
■EV戦略に乗り遅れた日本車メーカーはどうなる?
一方で、日本の自動車メーカーは、EVの言い方ではなく電動車の表現を好み、そこにはEVに加えプラグインハイブリッド車(PHEV)のみならず、既存のハイブリッド車(HV)やマイルドハイブリッド車も含み、総量としての販売比率を計画している。だがそれではリチウムイオンバッテリーの原価は下がりにくい。
欧米や中国のメーカーは、EV戦略を明確にしたうえで、ギガファクトリーの建設や、そこからのバッテリー供給を将来計画に入れはじめている。理由は、バッテリー工場は100%操業することではじめて合理的な原価が実現できるからだ。
リチウムイオンバッテリーといっても、電極材料で種類が異なる。さらに、EV用とHV用では充放電特性が異なるので、別種類になる。
求める性能が異なるバッテリーを同じラインで生産することはできず、種類の異なるリチウムイオンバッテリーを使おうとすれば工場の生産能力を100%使い切る稼働へ持ち込みにくくなる。そうなればバッテリーの販売価格は高くなるはずだ。
このところ、英国のジャガーや、スウェーデンのボルボ、また米国のゼネラル・モーターズ(GM)などがEVメーカーになると宣言しているのも、販売台数をより明確にし、リチウムイオンバッテリーの生産能力に合わせた100%操業を実現することで、確実な部品の入荷と原価の低減を狙ってのことだろう。
EV化は、海外の企業戦略に巻き込まれるとか、消費者が希望しているのかなどといって、20~30年後を念頭に、全個体電池など新技術の実用化に期待を寄せる発言を耳にするが、それでは世界の負け組となることは間違いないだろう。
EVの性能はすでに満たされている。これからは、車種の広がりと、価格低下が市場を支配する。いまあるリチウムイオンバッテリーをいかに安全に、有効に使いきるかの勝負に入っているのだ。
そこを見誤れば、日本の自動車メーカーはのきなみ退場させられる可能性が現実味を帯びることになる。
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