かつて日本に上陸したものの、販売が伸びず撤退を余儀なくされた経験のあるヒョンデ(現代)。そのヒョンデが、今改めて日本市場で燃料電池車『ネッソ』を投入し、開拓をしようと試みている。
市場規模としては、海外と比べて小さく、国内メーカーですら軸足を移している現状で、なぜ今参入しようと考えたのだろうか? また過去の痛い記憶があるにもかかわらず、なぜ今というタイミングだったのか?
さらに、実際に販売するとなれば販売店はどうするのか? や、「本当の本当に日本で売る気があるのか?」という根本的な部分まで、取材・考察していきたい。
文/渡辺陽一郎
写真/編集部
【画像ギャラリー】HYUNDAI(ホンダイ/ヒュンダイ→ヒョンデ)の次世代車、『ネッソ』を徹底チェック!!
■まずはFCVから? 日本市場再上陸を検討中!
ヒョンデジャパン(今のHYUNDAIはヒュンダイではなくヒョンデと表記する)のホームページを見ると、次世代モビリティの燃料電池車として、『ネッソ(NEXO)』の情報が掲載されている。外観はSUVで、ボディサイズは全長が4670mm、全幅は1860mm、全高は1640mmだ。モーターの最高出力は163馬力、最大トルクは40.3kg-mとされ、前輪を駆動する。
水素を充填するタンク容量は156.6L(52.2L×3本)で、フル充填された状態ならば820kmを走行できる。トヨタの『MIRAI』は、水素タンク容量が141L(64+52+25L)で、1回の水素充填によって「Z」は750km、「G」は850kmの走行が可能だ。
そしてネッソでは、5年または10万kmの保証期間を設けている。ホームページには具体的かつ詳細なデータが掲載され、右ハンドル仕様の写真、安全装備なども細かく解説されている。
日本仕様の価格は示されていないが、それ以外の情報は市販車の水準に達している。そこで発売時期などを現代(ヒョンデ)自動車ジャパンに問い合わせると、以下のような返答であった。
「現時点で日本の市場は、グローバルマーケットのひとつに位置付けられ、検討を行っている段階だ。従って取り扱い車種、発売時期、販売店など、具体的な内容は今のところ決まっていない。詳細が決まり次第、発表したい」
日本市場を前向きに検討していることは確かな様子だが、詳細は未定だ。ちなみに今の日本では、ヒョンデの大型バスを見かける機会が多い。日本自動車輸入組合の統計によると、ヒョンデのバスは2016年に163台、2017年には112台、2018年に12台、2019年は40台が輸入された。コロナ禍の影響などもあって2020年は5台に激減したが、時々見かけるブランドではある。
しかし乗用車は馴染みが薄い。ヒョンデは2001年に日本国内の販売を開始して、2002年には2423台を登録した。この後、2005年にはタクシー需要も視野に入れてソナタを国内へ導入したが、売れ行きは伸び悩み、2006年にはヒョンデの登録台数が2000台を下まわった。この後も下降を続け、2008年には年間登録台数が501台まで下がって撤退した。
それなのに日本に再び目を向けた理由として、まずはヒョンデの世界生産台数が挙げられる。1991年は約125万台であったが、2000年には250万台を超えた。その後に日本市場では進出のあとに撤退したが、2010年の世界生産台数は500万台を上まわる。2020年はコロナ禍の影響で低下したが、2019年の世界生産台数は719万台だ(傘下の起亜自動車を含む)。VW(フォルクスワーゲン)やトヨタのように1000万台は超えないが、GMと同程度の規模に達する。
つまりヒョンデは、少なくとも2019年までは成長段階にあったから、2000年代に日本で乗用車を販売していた頃とは状況が違う。車種のラインナップを見ても、『ソナタ』の現行型などは、日本で売られていた頃に比べて大幅にカッコよくなった。少なくとも2000年代に感じた「ひと世代古い5年前の日本車」という印象はない。外観は全般的にVWやプジョーに似ており、かつての「日本で売るのは非常に難しい」と思ったヒョンデからは脱している。
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