クラウンやスカイラインなど、伝統ある車名は長い歴史を持つ。一方で、長い伝統を持ち、名車の領域に足を踏み入れながら、その車名を捨てて再出発した車も多い。ファミリアからアクセラといった例もその一つだ。名車の実質的な後継車となったモデルは、成功していると言えるのか? そして、名門の車名をわざわざ捨てるほどの意義はあったのか?
文:片岡英明
写真:編集部、MAZDA、NISSAN
ファミリアの後継車「アクセラ」
1970年台後半、世界中に便利なハッチゲートを備えた2ボックススタイルが定着し、キャビンを広くできるFF(前輪駆動)のコンパクトカーが主役の座に就いた。
マツダは後輪駆動に固執していたが、1980年6月にファミリアをFF方式に転換し、送り出している。
初代VWゴルフを徹底研究し、電動サンルーフやラウンジシートなどを装備して送り出したFFファミリアは、デートカーとして大ヒット、サーフボードを積んだ真っ赤なXGは社会現象にもなった。
その後継車が2003年に登場したアクセラだ。海外では「マツダ3」を名乗り、「マツダ323」の名で輸出していたファミリア以上に人気者になっている。 が、ボディサイズが大きくなったことやハッチバックブームが去り、日本では月販2000台レベルの販売実績だ。
初代ファミリアは、ひと月で現在のアクセラの1年分の販売を記録し、トヨタのセールス氏をも歯ぎしりさせた。アクセラにファミリアのようなカリスマ性はないが、ファミリーカーとしての実力は高く評価されている。
スターレットから世界戦略車となったヴィッツ
スターレットはトヨタのエントリーモデルで、1978年に登場した2代目(KP61型)は、走りのよさがウケ、ヤングからも熱く支持された。
メカニズムや性能は平凡だったが、軽量ボディとFR方式によって気持ちいい走りを手に入れている。
これに続く3代目(EP71型)は「かっ飛びスターレット」のキャッチコピーで売り出し、こちらもヤングをとりこにした。最大の特徴は、後輪駆動から前輪駆動のFF方式に生まれ変わったことだ。後にターボも加わり、走り屋たちを魅了した。
その後継車が1999年にデビューしたヴィッツだ。ヨーロッパでも生産を行う世界戦略車で、デザインや品質、安全性能などは、クラストップレベルを目指した。
海外では「ヤリス」の名で販売され、ブレイクした。日本に加え、ヨーロッパでもカー・オブ・ザ・イヤーに輝いている。現行の3代目も海外では高く評価がされ、ファンが多い。WRC(世界ラリー選手権)に参戦したことも功を奏し、トヨタのイメージアップに大きく貢献した。
10代続いたセドリックの後継「フーガ」
セドリックは日産を代表するプレミアムセダンだ。VIP向けセダンや爽快な4ドアハードトップなど、日本で初めてとなる新感覚のクルマを積極的に生み出してきた。
また、日本初のターボ搭載車や日本初のV型6気筒エンジンなど、新しいメカニズムの採用にも意欲を燃やした。ただし、日本専用モデルに近いから、海外では知られていない。
とはいえ、日本の風土に根ざした大人の高級セダンだから、今でも懐かしむ人が多い。
フーガはセドリックと兄弟車のグロリアの後継となる最上級オーナーカーである。2004年に誕生し、現行モデルは2代目だ。海外ではインフィニティブランドで販売されている。
登場したのは2009年だから新鮮味は失せてしまった。ハイブリッド車も設定するが、環境性能はクラウンに遠く及ばない。
海外はともかく、日本では販売台数が少ないからリセールバリューも低くなっている。歴代のセドリックのように、後世に語り伝えられ、愛される車にはならないだろう。
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