■トヨタも水素は燃料電池で使うつもりだったが気が変わった??
ということで「水素は燃料電池で使う」になったのだけれど、今回モリゾウさんがレースで使う水素エンジンのスペック&実走行燃費を見て心底驚く! 予想をはるかに超える熱効率だったからだ。公開されたデータによれば、7.34kgの水素で富士スピードウェイを50km程度走れるそうな。言うまでもなくレーシングスピードである。
ラップタイムを見ると2分5秒くらいで走ってます。このタイムを出そうとしたら250psくらい必要。参考までに書いておくと、初代MIRAIで富士スピードウェイを全開走行したら、50kmで4kgくらいの水素を使う。何度もレースに出たから間違いなし。この数字だけ見たクルマやレースに詳しくない人だと燃料電池がいいと思っちゃう?
まったく違います。MIRAIは150ps。ラップタイムだって2分18秒くらい。250psを出す燃料電池を作ったら、水素エンジンと同じくらいの水素消費量になってしまうだろう。水素を上手に燃焼させることで燃料電池と同じくらいの効率になる。だからこそ燃料電池の開発チームは驚いたし、強力なライバル登場だと実感したワケです。
ちなみに水素ロータリーとの違いだけれど、直噴技術などによりエンジンの熱効率が2倍近く向上し、水素タンクの圧力も350気圧から2.3倍の800気圧になった点が決定的。少しクルマに詳しい人だと「水素エンジンなんか昔からある」と軽く言うが、一世代前の水素エンジンを江戸時代の飛脚だとすれば、もはや宅急便くらいの差があります。
水素エンジン、早くもトヨタのカーボンフリー戦略の候補になっているようだ。2020年度の決算報告記者会見を見ていたら、長田執行役員が「電気自動車だけでなく、既存のクルマにeフューエルなどを使えるようにしていく方法もあるし、ディーゼルエンジンの代替パワーユニットとして水素エンジンだって可能性があります」と語っていた。
長距離トラックの生涯航続距離は200万kmにもなる。燃料電池だと耐久性で厳しい。水素エンジンなら熟成したエンジン技術を使えるため、200万kmも問題なし。大型トラックなら液体水素を燃料として使う技術的なハードルも低くなる。水素エンジンは、確かにさまざまな可能性を持っているんじゃなかろうか。今後の熟成を見守りたいと思う。
追記しておくと、モータースポーツで使うとなれば安全性が大切になってくる。今回、水素タンクはすべてロールケージの内側に搭載しているなど配慮しているし、カーボンの一体構造になっている水素タンクそのものも圧倒的に強い。ガソリンタンクのほうがずっと壊れやすく、壊れた時の危険性だって大きいと思う。モータースポーツに使ってもまったく問題なしだ。
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