マツダ製ピュアEVの完成度とは?
東京モーターショー 2019の開催も間近。そして、同ショーにマツダが出展する再注目車が、新型のEVだが、その公開に先立ち、CX-30の外観を模したEVのプロトタイプに、北欧ノルウェーの地で先行試乗。
「EVはつまらない」。そんなふうに揶揄されることも多いが、マツダのEVは「内燃機関の味がする」というのは試乗ドライバーを務めた筆者の松田秀士氏。
「生き物のような内燃機関の味がするEV」とはいったい何を意味するのか?
文:松田秀士
写真:MAZDA
ベストカー 2019年10月26日号
【画像ギャラリー】マッドブラックを脱いだら!? 新型CX-30の内外装
意外と速くない!? EVらしからぬ加速に秘められたマツダの開発思想
「マツダは電動化車両においても走る楽しさ、走る喜びを大切にします」。
オスローでの試乗会の席で開発責任者の松本執行役員はこう言い切った。どんな楽しさ、喜びがあるのか? ここ最近のマツダ3そしてCX-30と立て続けに海外試乗してきたが、いずれも今までにないクォリティを肌で感じた。
今度のピュアEVの楽しさとはモーターパワーだろうか? そこにはマットブラックに塗られ、ボディサイドに「e-TPV」と書かれたCX-30がいた。
外観はCX-30だが、中身はすべて別物で専用開発のプロトタイプだという。しかし、サスペンション型式はフロントストラット/リアトーションビームと、マツダ3やCX-30と同じ。
アクセルを踏み込むとゆっくりと加速。な〜んだ、たいして速くない。そう、予想より全然普通の加速感。EVといえばゼロ回転から最大トルクを発生するので、出だしでヘッドレストに頭がぶつかるほどの加速Gがあるのかと思いきや、まったく普通。
しかし、走り込むうちに、このスロットルフィールはまるでよくできたガソリン車と変わらないことがわかる。EVは無機質でデジタルなレスポンスが普通なのだが、このEVはまるで生き物のような内燃機関の味がするのだ。
マツダ新型EVの出来栄えとロータリーエンジンの役割
そして、驚いたのはハンドリングとサスペンションフィール。35.5kWhのバッテリーを床下に積むので低重心だから、という常識以上にサスペンションの動きが素晴らしい。
ステアリングを切るたびに、スムーズなロールを発生し、モーターゆえにGベクタリングコントロール+(※)のコントロールが加減速時に積極的に行える。それに気づいているわけではないが、いつしか思いどおりにコーナリングをトレースしている自分に気づかされるのだ。
(※ハンドル操作に応じてエンジンの駆動トルクを変化させる車両制御システム)
かねてからマツダはWell to Wheel(油田からタイヤを駆動するまで)でのCO2削減をテーマにしている。そしてマツダはこのEVに、もう一歩踏み込んだライフサイクルでのCO2削減の意思を込めている。
それはEV製造における資源採掘から製造、そして廃棄までのプロセスだ。そのなかから出た結論が35.5kWhというリチウムイオンバッテリーの容量。
むやみに大きなバッテリーを搭載するのではなく、このレベルのバッテリーサイズで航続距離を技術によって延ばす。それ以上の距離は新開発シングルローターのロータリーエンジンでの発電によって延ばす。EVに対するマツダのシンプルな姿勢。
しかも過去のロータリーエンジンの研究で得た、ガソリンだけに頼らないLPG、CNGそして水素といった多様な燃料への可能性によって環境対策を行うというのが、マツダの考えなのだ。
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