■クルマのバッテリーはこうして劣化する
本来、バッテリーの電力を使うのはエンジン始動時のセルモーターを駆動する時だけで、エンジンが始動されれば、その後はエンジンが駆動するオルタネータ(交流発電機)が発電した電力で車両の電装品に電力供給して、バッテリーは電圧を安定させるのに役立っている。
始動時に消費した電力は、オルタネータの発電によって充電されて、次のエンジン始動に備える訳だ。
こうした充放電を繰り返すことによって、バッテリーは劣化していく。といっても普通の鉛酸バッテリーは実にシンプルな構造なので、その劣化の仕方もシンプルだ。
負極板の鉛から溶け出た鉛イオンは希硫酸と結び付いて硫化鉛となることは前述した。その硫化鉛は電解液中に漂うだけでなく、正極板に付着する。充電によってこの硫化鉛は硫酸と鉛に還元されて鉛は負極板に再び戻る、というのが充放電のサイクルだ。
ところが充放電を繰り返していると、電圧が低い状態では硫化鉛が堆積することになり、還元されることがなくなって正極板に結晶化していく。
これはサルフェーションと呼ばれる現象で、これによって電解液中の硫酸の濃度が下がってしまうため、起電力が落ちてますます電圧を上げることができなくなってしまうのだ。
アイドリングストップなど、大電流の放電を繰り返すような使い方では、こうして電圧が低くなる状態が多くなる。自動車メーカーも工夫してエンジン再始動後は、なるべく早く電圧を上昇させるように積極的に充電する制御を組み込んだりしているが、それでもバッテリーにとっては厳しい状況であるのは間違いない。
アイドリングストップ車専用のバッテリーは高価な上に寿命が2、3年と短いのは、充放電の能力を高める工夫が施されていても、充放電の繰り返しと充電不足がジワジワとバッテリーを弱らせていくからだ。さらに自然放電は電圧が下がっていく一方なので、サルフェーションが発生しやすいようだ。
カー用品販売大手のオートバックスでは、バッテリーメーカーのアフター品であるバッテリーを販売しているほか、バッテリーメーカーと共同開発したPB(プライベートブランド=自社オリジナルブランド)商品のバッテリーを販売している。
2021年4月の全店舗売れ筋ランキングでのバッテリー部門を見てみると、5位までの中で3位にGSユアサの製品がランク入りしているものの、残りは全てパナソニックと共同開発したPBブランドのGAIAシリーズだった。
この理由をオートバックスに聞いてみると「純正バッテリーよりリーズナブルなことと、性能や容量をグレードアップしたいお客様から選んでいただいているようです」とのこと。
純正のアイドリングストップ車用バッテリーは3万円~5万円となり、2年ごとに買い替えを要求されるのであれば、より高性能で安価なバッテリーがあればそちらを選ぶのは当然のことだろう。
すべてをディーラー任せにせず、カー用品店を上手く活用しているユーザーがこうしたバッテリーを選んでいるということが、売れ筋から浮かび上がってきた格好だ。
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