現在、梅雨の真っ只中ですが、晴れの日の最高気温が25度を超えるようになってきました。これからの季節、エアコンを使う機会が増え、バッテリー上がりなどのバッテリートラブルが頻繁に起きる季節がやってきました。
2020年5月のゴールデンウィーク中のJAFロードサービスの主な出動理由を見ると、1位は過放電バッテリーで出動回数は1万6779件、2位はタイヤのパンクやバーストで6015件、3位は破損、劣化バッテリーで2545件。
全体の割合では過放電バッテリーが44.1%、破損、劣化バッテリーが6.7%と、バッテリートラブルがJAFロードサービス出動回数の約5割を占めている。いかにバッテリーのトラブルが多いのかがわかる。
そこで、なぜバッテリーは劣化するのか? こうしたバッテリートラブルを事前に防ぐためにはどうしたらいいのか? 寿命を延ばすコツなど、バッテリーに関する最新事情をモータージャーナリストの高根英幸氏が解説する。
文/高根英幸
写真/ベストカーweb編集部 Adobe Stock(トビラ写真/Adobe Stock@NATHAPHAT NAMPIX)
【画像ギャラリー】劣化、破損、過放電……トラブルを防いで寿命を伸ばそう!! クルマのバッテリーあれこれ
■これからの季節、バッテリートラブルが頻発する
今年は梅雨入りが全国的に早いが、そのぶん早く梅雨明けするとは限らないそうだ。統計上、梅雨入りの時期と梅雨の期間の長さには関連性はほとんどないらしい。ただでさえ近年はゲリラ豪雨などの大雨災害が増えているだけに、雨天時の走行には十分注意してもらいたいものだ。
梅雨の時期からは電装品の使用機会も増え、夏に向けてバッテリーの負担が増えるようになる。雨天走行時は曇り止めのためにエアコンを使うし、視界確保のためにはワイパー、被視認性を向上させるために日中でもスモールランプやヘッドランプを点灯することも多い。
そして夏になるや冷房のフル稼働にエンジンルームの温度上昇、夕立ちなどで電装品が活躍するだけでなく、その環境も過酷なものとなるのだ。バッテリーの負担増は容易に想像がつくだろう。
最近のクルマは電子制御の安全装備や快適装備を満載し、さらにはレーダー探知器やドライブレコーダー、スマホの充電にコロナ対策のために空気清浄機なども追加されたりして、電力消費が増える一方だ。
そのためエンジン車であっても、ひと昔より発電機も発電容量が大きなモノを搭載していることが多いが、信号待ちなど状況によっては電力消費に発電が追い付かず、バッテリーの電力も利用するシーンも出てきてしまうこともある。
一般的な電装用バッテリーは電圧12Vの鉛酸バッテリーが用いられる。これは負極板に鉛、正極板に二酸化鉛を使い、電解液(バッテリー液)に希硫酸を使うことで負極板の鉛を溶かし硫化鉛とすることにより電流を発生させる。
1セル(1つの電池)あたりの起電力はこの場合2Vなので、直列につないだ6セルで12Vの電圧を実現している。
電圧(V)の高さと電流(A)の大きさをかけたものが電力(W)だ。これを分かりやすく河川の流れに置き換えると、電圧は流れの速さ、勢いだ。
そして電流は川幅になる。その勢いと川幅によって得られる水量が、電力なのである。ゆっくり流れていても川幅が大きければ水量は豊かなものになるし、激しい流れでも川幅が狭ければ、水量はそれほど多くはない。
電気の使い方もまさにそれと同じで、動力として使うなら勢いがあったほうが、少ない電力で済む。EVやハイブリッドの駆動用バッテリーが高電圧なのは、そういう理由からだ。
クルマの電装品が12Vで統一されているのは、最初に規格化して普及させたからで、実際にはエンジンの中ではスパークプラグは10万Vの高電圧で放電させているし、半導体やセンサーは大概5Vの電圧で駆動されている。
万が一の短絡時の安全性や電装品の耐久性を考慮して程良い電圧である12Vがメインの電圧として使われ続けているのである。
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