「自動ブレーキ」呼称に異議あり!? 言い過ぎな宣伝文句 3選

テスラの「オートパイロット」など各名称も誤解のおそれ

テスラは先行車に追従する機能を持つクルーズコントロールに「オートパイロット」という名称を使用している
テスラは先行車に追従する機能を持つクルーズコントロールに「オートパイロット」という名称を使用している

運転支援機能の名称が誤解を助長することもある。アメリカの電気自動車、テスラでは、航空機に使われるのと同様の「オートパイロット/自動操縦」と呼ぶ。これも誤解を招く表現だ。日産のプロパイロットは、オートパイロットほどではないが、あまり良い名称ではない。

では何が良い表現かといえば、幅広く定着している「クルーズコントロール」だろう。スバルのアイサイトツーリングアシストも、アシスト(支援とか補助)の言葉が入るから誤解されにくい。

本稿が「自動」という言葉にこだわる理由は、危険性を伴うからだ。

例えばラジオの自動選局の機能が不完全だった場合、自宅のホームオーディオであれば、人命が脅かされる心配はない。しかし車載のカーオーディオの自動選局が未熟だと、運転中にドライバーが選局に気を取られ、視線も前方からはずれるために交通事故に繋がりかねない。

車では、エアコンのスイッチひとつが運転ミスの構成要素になり得る。逆にいえば、事故に無関係な機能は皆無だ。

そこで車の開発者は事故に繋がるいろいろな危険性を検討しながら開発しており、宣伝方法もその意図を汲み取ることが大切だ。

開発者は自分たちの開発している衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能が「自動」だとは考えていない。

以前、自動運転とか自動ブレーキのCMが始まる前に、操舵まで含めた操舵支援をどのように表現すれば良いのか、日産の開発者に尋ねた。

その時の返答は「スーパー・クルーズコントロールと考えて欲しい」というものだった。これは的確な表現で、運転を支援するクルーズコントロールの進化版としている。断じて自動運転ではない。

メーカーが宣伝したり、マスコミが報道したり、あるいは国が技術の指針を決める時などは、必ず開発現場の意見を聞いて欲しい。そうしないと根拠の乏しい期待や理想に突っ走り、現実に合わない宣伝や報道になりやすい。

e-POWERは「電気自動車の新しいカタチ」なのか

ノートに続きセレナにも搭載されたe-POWER。モーターによる新しい運転感覚を筆頭に技術的には魅力ある商品であることに疑いはないが……
ノートに続きセレナにも搭載されたe-POWER。モーターによる新しい運転感覚を筆頭に魅力ある商品であることに疑いはないが……

最後にe-POWERの宣伝も気になる。「セレナにe-POWER搭載。電気自動車の新しいカタチを充電いらずで」というCMコピーは、自動運転や自動ブレーキに比べると、ユーザーをあざむいて交通事故を誘発する危険は低い。それでも誤解を招きやすく、失笑を買うこともあるだろう。

セレナやノートのe-POWERは、エンジンが発電を行い、その電気でモーターを駆動するシリーズ方式のハイブリッドだ。同じような機能に、ホンダオデッセイ/ステップワゴン/アコードのハイブリッド、三菱アウトランダーPHEVもある。

給油してエンジンを駆動するハイブリッドでは「充電いらず」は当たり前だ。さらにいえば、アウトランダーPHEVのような充電も可能なプラグインハイブリッドに比べると、充電できないのは技術として遅れている。

つまり、「電気自動車の新しいカタチを充電いらずで」は、開き直った表現でもあるだろう。

日産としては、一連のCMで相応の販売効果を得られたとしている。今の日産は売れ筋車種が限られ、日産車ユーザーの乗り替えがセレナやノートに集中した事情もあるが、関心を引き付ける個性的なCM成果もそれなりに貢献した。

ただし、実際の機能と異なる宣伝をしてはならない。特に車では、宣伝の仕方次第で危険を誘発するから、開発現場のチェックも受けながら入念に表現する必要がある。

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