ホンダフリードがトヨタシエンタよりなぜ売れているのか

■フリードの売れ筋グレードは「G ホンダセンシング」

 フリードは2016年に発売された後、2019年にマイナーチェンジを実施している。フロントマスクを大幅に変更して、新しいバリエーションとしてはSUV風のフリードクロスターも加えた。

2019年のマイナーチェンジで追加された『クロスター』。専用グリル、エアロパーツ、ルーフレールなどを装備しクロスオーバーテイストを加えた
2019年のマイナーチェンジで追加された『クロスター』。専用グリル、エアロパーツ、ルーフレールなどを装備しクロスオーバーテイストを加えた

 2020年にはエアロパーツを装着するモデューロXもマイナーチェンジしたが、大幅な販売のテコ入れにはなっていない。

 そこでフリードが好調に売れる理由を販売店に尋ねると、以下のように返答された。

 「フリードの販売は安定していて、時間が経過しても人気が下がらない。子育てを終えたお客様がステップワゴンから乗り替えたり、フィットのお客様が2人目の子供が生まれてフリードへ上級移行している。売れ筋グレードは、ノーマルエンジンを搭載するGホンダセンシングだ。クロスターや2列シートのフリードプラスは、それほど売れていない」。

2020年に現行型にモデルチェンジした『フィット』。子どもが増えて手狭になりフリードに乗り換えるケースが発生している
2020年に現行型にモデルチェンジした『フィット』。子どもが増えて手狭になりフリードに乗り換えるケースが発生している

 フリードの売れ筋グレードは、216万円400円(6人乗り)のGホンダセンシングとのことだから、堅実なニーズに支えられている。ステップワゴンからのダウサイジングと、フィットからのアップサイジングという2つの需要があることも強みだ。

写真は「フリード ハイブリッド G ホンダセンシング」で価格は256万1900円からと売れ筋モデルより約40万円高い
写真は「フリード ハイブリッド G ホンダセンシング」で価格は256万1900円からと売れ筋モデルより約40万円高い

■ステップワゴンの価格上昇でフリードへ乗り換え

 ステップワゴンの価格上昇も見逃せない。ステップワゴンは2017年のマイナーチェンジでハイブリッドのi-MMD(現在の名称はe:HEV)を加えて、フロントマスクも変更したが、その対象はスパーダのみであった。標準ボディは基本的に変えておらず、ハイブリッドも選べない。

2015年より販売開始した現行5代目『ステップワゴン』。写真のグレードは「ステップワゴンeHEV スパーダ G・ホンダセンシング」
2015年より販売開始した現行5代目『ステップワゴン』。写真のグレードは「ステップワゴンeHEV スパーダ G・ホンダセンシング」

 安全装備の充実などによってステップワゴンの価格は高まり、現時点ではノーマルエンジン(1.5Lターボ)を搭載する売れ筋のスパーダ ホンダセンシングが292万500円だ。ハイブリッドのe:HEVスパーダ Gホンダセンシングは342万7600円に達する。

 2011年には、先代ステップワゴン スパーダSが245万8000円(当時の消費税率は5%)で販売されていたから、今はステップワゴンの価格が10年前の1.2倍に高まった。そうなると現行ステップワゴンでは予算が超過して、購入車種をフリードに変更することもある。

 また2021年1~5月に国内で新車として売られたホンダ車の内、N-BOXを始めとする軽自動車が57%を占めた。そこにフリードとフィットの登録台数も加えると、国内で新車販売されたホンダ車の約80%に達する。

 こうなればホンダのブランドイメージも、コンパクトで価格の安いクルマに移り、ダイハツやスズキに近付いていく。ステップワゴンの価格上昇だけでなく、ホンダのブランドイメージがダウンサイジングしたこともあり、フリードの売れゆきは発売から時間を経過しても下がりにくい。

 以前はホンダのミニバンといえば、オデッセイかステップワゴンだったが、今はフリードになったわけだ。

次ページは : ■ホンダ日本国内のブランドイメージが危機的状況に

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