ポイントは床下のエアロ。ヴァルキリーの空力性能に迫る
ヴァルキリーを前方から目にした際に、最初に注意が行くのがノーズの下に大きな空間が設けられていること。近年では規定により禁止されたが、90~10年代のF1では、ノーズを大きく持ち上げてその下に大量の空気を流し込み、後方のディフューザーから引き抜くことによって、床下に負圧を作り出して車体を路面に押し付けていた。これがいわゆるハイノーズデザインだが、ヴァルキリーでもこのハイノーズ思想がとり入れられている。
一般的な公道車両ではラジエターが装着される位置には何もなく、ノーズ下部から入った空気はスムーズに後方に導かれる。そしてノーズからウイングが吊り下げられるのもF1流だ。
ノーズ下から流れる空気は、フロントタイヤ後方側面と車体後部の大型ディフューザーから引き抜かれる。この造形もロードカーというよりレーシングカーそのものであり、並外れたダウンフォースが生成されることが容易に想像できる。
実際にアストンマーチンでは、ヴァルキリーが発生するダウンフォースを「公道で走行可能なクルマとしては前例のないレベル」と発表している。
エンジン単体でも1000ps超え! モーターのアシストでさらなるハイパワーに
ヴァルキリーの心臓部となるV12エンジンは、イギリスの名門レーシングエンジンコンストラクターのコスワース社と共同で開発された。6.5リッター自然吸気式V12エンジンはミドシップマウントされ、リアサスペンションやギヤボックスがエンジンによって保持されるストレストマウントスタイルを採用。これはレーシングカーとまったく同じ方式で、そのためにエンジンブロックの剛性は通常の市販車用エンジンよりも高くなっているにもかかわらず、単体重量は206kgと軽い。
6.5リッターのマルチシリンダーエンジンが叩き出す最高出力は実に1014ps。回転数はロードカーとしては異例の1万1000rpmに達し、最大トルクも740Nm(75.46kg・m)という途方もないもの。これだけでも十分にヴァルキリーの高性能が想像できるが、さらに電動モーターによるハイブリッドシステムも搭載され、162ps、280N/m(28.6kg・m)のモーターが、ヴァルキリーのスピードをより高いレベルへと引き上げる。
高い空力性能と優美さを併せ持った最先端のフォルム
美しいボディラインにはニューエイの持つノウハウがふんだんに盛り込まれている。実際のデザインはアストンマーチンのスタッフが担当しているものの、ニューエイとの綿密な協力によって完成したスタイルなのは、ヴァルキリーを見ればすぐに理解できる。
水滴型に造形されたコクピットは、もちろん空気の流れを考慮してのもの。しかし、ドライバーとパッセンジャーの空間は十分に確保され、快適なドライブを楽しめる。マシンを安定させるダウンフォースの多くを床下で得ていることもあり、他のスーパーカーに見られがちなスポイラーや大型ウイングはなく、エレガントなラインを損なうことはない。ボディの素材はカーボンファイバー製で、車体の軽量化に大きく貢献している。
F1チーム・レーシングポイントのオーナーであるローレンス・ストロールがアストンマーチンの株式を取得し、レーシングポイントは2021年からアストンマーチンF1チームとなった。これによりレッドブルF1チームとアストンマーチンの提携は終わりを迎えたものの、レッドブル・アドバンスト・テクノロジーとの協力関係は継続されるという。
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