エンジンは豊富だがやや選びにくい面も?
そしてCX-30はエンジンを豊富に用意するが、選びにくい面もある。
2LのスカイアクティブXは、火花点火制御圧縮着火方式を採用してマイルドハイブリッドやスーパーチャージャーも備える画期的なエンジンだが、高コストで価格も高い。
「Xプロアクティブ」の2WDは329万4500円だから、2Lノーマルガソリンエンジンの「20Sプロアクティブ」を68万2000円上まわる。これでは購入しにくい。
CX-30はクリーンディーゼルターボも用意するが、CX-5の2.2Lではなく1.8Lだ。動力性能は実用的には充分だが、クルマ好きのユーザーには少々物足りないだろう。低回転域で沸き上がるような駆動力が乏しいためだ。
それでも1.8Lクリーンディーゼルターボを搭載する「XDプロアクティブ」の2WDは288万7500円だから、2Lガソリンの20Sプロアクティブに比べると27万5000円高い。
その点でCX-5のXDプロアクティブは、性能の高い2.2Lクリーンディーゼルターボを搭載して、2WDの価格は322万8500円だ。CX-30のXDプロアクティブを買うなら、34万1000円を加えて、CX-5の同グレードにするユーザーも多い。
以上のようにCX-30では、同じマツダ車に開発コンセプトや内外装の似通ったSUVが多く、身内同士の競争で不利を強いられている面がある。
このほかボディサイドの映り込みが美しい外観は、CX-30の魅力だが、SUVには野性味も求められる。CX-30はキレイに美しく、まとまり過ぎた面もあるだろう。逆にライズは、価格が安いこともあり、少し粗削りで粗野な感覚を上手に生かしている。SUVだから引き立つデザインだ。
販売店舗数も影響した。トヨタは全国に4600店舗、日産やホンダも2100~2200店舗を展開するが、マツダは700~800店舗に留まる。販売網にこれだけの差があると、売れ行きにも格差が生じやすい。
課題はあるもののCX-30はXVと並ぶ希少なSUVの選択肢
ただしCX-30にも魅力はある。全高を1540mmに抑えたから、立体駐車場を利用しやすい。自宅マンションの駐車場に全高の制限が設けられるユーザーにとって、CX-30は数少ないSUVの選択肢になる。
外観は前述の通り野性味が乏しいが、ワゴン風でスマートだ。天井を低めに抑えたから重心も下がり、峠道などではスポーティな走りを楽しめる。内装はていねいに造り込んだ。
CX-30に位置付けが似ているライバル車はXVだ。インプレッサスポーツをSUVにアレンジしたクルマで、全長はCX-30よりも約100mm長いが、全長と全幅は同程度になる。売れ行きはCX-30と同等だが、月によってはXVが上まわることもある。
天井を立体駐車場が使いやすい高さに抑えながら、XVは最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)が200mmだから、悪路のデコボコを乗り越えやすい。CX-30の最低地上高は175mmで、XVに若干の余裕がある。
そして身長170cmの大人4名が乗車した時、XVの後席に座る乗員の膝先空間は、握りコブシ2つ半になる。1つ少々のCX-30に比べてかなり広い。荷室容量は同程度だ。
XVのエンジンは、水平対向4気筒の1.6Lと2Lで、後者はハイブリッドのe-BOXERになる。駆動方式は4WDのみ。2Lガソリンエンジンの4WD同士で動力性能を比べると、CX-30に少し余裕がある。
それでもXVの場合、低回転域では、e-BOXERのモーター駆動が上手にエンジンを支援する。XVでもパワー不足は感じない。WLTCモード燃費は、XVの2Lは15km/L、CX-30の2Lガソリンは4WDが14.8km/Lになる。XVはe-BOXERなのに、燃費数値は同等だ。
走行安定性は、XVは後輪の接地性を優先させて、安定性や運転のしやすさを向上させた。CX-30は少し機敏に曲がり、峠道などの走りに適する。乗り心地は両車ともに少し硬い。
価格はCX-30に2Lのガソリンエンジンを搭載する4WDの「20Sプロアクティブ」が284万9000円、この仕様に相当するXV「2.0e-Sアイサイト」は287万1000円だ。
両車ともに4WDを備えたSUVを300万円以下で購入できる。街中でも運転しやすく、立体駐車場を利用するユーザーにも適する。両車とも売れ行きはいま一歩だが、都市部に住むユーザーにとっては、注目度の高いSUVだと思う。
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