欧州では常識だし安全なのに…日本でランナバウトが普及しない実情と「意識」の差

円形交差点ではスムーズな流れはつくれない

 似たような仕組みに円形交差点というものがある。フランス・パリにある凱旋門の周りをぐるっと囲んでいる、あの道路のことだ。

凱旋門にある円形交差点。環状道路を回っているクルマは進入しようとするクルマのために道を譲らなければならず、スムーズな流れを作るのは難しい(PHOTO:AdobeStock_ espiegle)
凱旋門にある円形交差点。環状道路を回っているクルマは進入しようとするクルマのために道を譲らなければならず、スムーズな流れを作るのは難しい(PHOTO:AdobeStock_ espiegle)

 ラウンドアバウトと円形交差点の違いは交通ルールで、円形交差点では左側から来るクルマが優先=交差点に進入してくるクルマが優先になる。つまり、円形交差点の場合は、環状道路を回っているクルマは進入しようとするクルマのために道を譲らなければならず、スムーズな流れを作るのは難しい。

 また、「交差点に入るときは一旦停止しなければならない」というルールもあるため、枝側の道路に停止線や一時停止標識、または信号機が設けられるケースが多く、結果としてラウンドアバウトのようなメリットは得られなくなるのだ。

「広い場所」が必要なほか、日本の考え方も普及の妨げに

 もちろんメリットばかりではない。歩行者にとっては、道路の横断が複雑になって長い距離を歩かなければならず、信号機がないため視覚障害者が一人で横断するのが難しくなる。そして、最大の懸念点が、ラウンドアバウトを設置するためには「広い場所が必要」という点だ。

 ラウンドアバウトは中央島が必要なため、十字型の交差点よりも広い場所を必要とする。住宅街のように交差点のスペースが広く取れない場所では、簡単に改修することはできない。そしてこれが、日本で普及が進まない最大の理由だ。

ラウンドアバウトの設置には広大なスペースが必要。これが、日本で普及が進まないもっとも大きな要因だ(PHOTO:写真AC_ ぶんぶん丸)
ラウンドアバウトの設置には広大なスペースが必要。これが、日本で普及が進まないもっとも大きな要因だ(PHOTO:写真AC_ ぶんぶん丸)

 広いスペースが必要なため、既存の交差点を改修するのは難しく、仮にスペースが取れたとしても、事故の多い交差点でない限り、費用をかけて大掛かりな改修をしよう、という動きにまでは結び付かない。

 より手っ取り早くかつ費用もかからないのは、既存のロータリーをラウンドアバウトに改良するという方法だが、国土交通省の資料によると、ロータリーからラウンドアバウトへ改修された交差点に対する調査で、「改修前よりも危険になった」と感じる人は歩行者で2割、自転車で4割いたそうだ。

 実際にはクルマの通過速度が落ち、安全性は向上しているはずだが、「慣れていない」ことで、ロータリーより危険であるかのように感じてしまうことが、積極導入の足を引っ張っている可能性もある。

 こうした理由からか、日本のラウンドアバウトのなかには、環状道路への進入路に「一時停止」標識を置き、流れを殺しているラウンドアバウトもある(もちろん、状況によって設置が必要な場合もあるが)。

ラウンドアバウトの標識と共に、一時停止の標識が設置されているところも(PHOTO:Adobe Stock_YK-image)
ラウンドアバウトの標識と共に、一時停止の標識が設置されているところも(PHOTO:Adobe Stock_YK-image)

 ラウンドアバウトは「合流」に近い考え方で交差点へのスムーズな進入を実現するための形式なので、これではメリットがほとんどないと言ってもいいだろう。

 「とにかく止めた方が安全」という日本の考え方と「クルマを止めずにゆるやかな流れを作ることで安全を確保する」という欧米の考え方の相異も、普及が進まない理由のひとつかもしれない。

◆   ◆   ◆

 まだまだ日本では見慣れないラウンドアバウト。初めて走る道で急に目の前に現れたら「どんな風に通ったらいいかわからない」 「どのタイミングでウインカーを使ったらよいかわからない」と戸惑うこともあるだろうが、日本でその光景を見る日は、もう少し先になりそうだ。

【画像ギャラリー】なぜ日本では普及しない!? 欧米で普及が進む、信号を必要としない交差点「ラウンドアバウト」のメリットデメリットをクイックチェック!!

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