■フリードが安定して売れている理由は?
なぜフリードは安定して売られるのか? 販売店に尋ねると以下のように返答された。「フリードは先代型、現行型ともに人気が高い。フリードを数台にわたって乗り継ぐお客様に加えて、子育てが終わり、ステップワゴンから乗り替えることもある。
ミニバンは便利だから、子育てを終えても、サイズダウンしてフリードを選ぶ。またフィットのお客様に、2人目の子供が生まれ、車内が狭くなってフリードに乗り替えることもある」。
このようにフリードは、ステップワゴンからのダウンサイジング、フィットからのアップサイジング、フリードを乗り継ぐイコールサイジングという具合に、さまざまなホンダのユーザーが購入している。
最近のホンダのブランドイメージが、コンパクトな方向に発展したことも、フリードの安定的な売れ行きに結び付いている。N-BOXは2011年に発売された初代(先代)モデルから販売が好調で、2017年に2代目の現行型が登場すると、売れ行きが一層増えた。
そのために最近は、国内で新車として売られるホンダ車の内、30%以上をN-BOXが安定的に占めている。N-WGNなどを含めた軽自動車の販売比率は、国内で新車として売られるホンダ車の50%以上だ。そこにフリードとフィットを加えると、70~80%に達する。
その結果、ホンダのブランドイメージも「小さなクルマのメーカー」になっている。ホンダのミニバンといえば、もはやステップワゴンやオデッセイではなくフリードだ。ミドルサイズ以上は、ヴォクシーやセレナ、あるいはアルファードになる。
この影響でホンダではステップワゴンの登録台数が下がり、2020年は前年に比べて35%減った。フリードの登録台数に比べると、ステップワゴンは半数以下だ。軽自動車のN-BOXを筆頭に、ホンダの売れ筋車種が小さくなり、今はフリードとヴェゼルが実質的にホンダの上級車種になっている。
■良さはどこにある? シエンタを上回るフリードの商品力について
フリードは商品力も高い。ほかのミニバンに対する優位性として真っ先に挙げられるのは、全長を4300mm以下に抑えながら、全高は1700mmを上まわり、コンパクトでも外観をミニバンらしい印象に仕上げたことだ。
ライバル車のシエンタは、薄型燃料タンクで床を低く抑え、全高も1700mm以下になる。そのために外観はワゴン風だが、フリードはボディが小さくても背が高く、ウインドーの面積も広く見える。ミニバンらしい存在感を強めた。
フリードは車内も広く、2列目シートはベンチタイプではなく、両側にアームレストを備えるセパレートタイプの6人乗りが主力だ。3列目シートは左右に跳ね上げるタイプで、2列シート時には広い荷室になって自転車なども積める。ミニバンの実用性も高い。
価格は1.5Lガソリンエンジンを搭載する2WD・Gホンダセンシング(6人乗り)が216万400円だ。同程度の装備を採用したステップワゴン2WD・Gホンダセンシングに比べると約55万円安い。
このようにフリードは、ステップワゴンのようなミドルサイズミニバンに比べると、コンパクトで運転しやすく価格も大幅に安い。その一方で基本的な機能はほとんど変わらず、外観も見劣りしないから、買い得感を強めた。
衝突被害軽減ブレーキなどの安全装備、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールといった運転支援機能も備わり、大切な家族を乗せるクルマとしての安心感を備えることもフリードの大切な魅力だ。
このようにフリードは買い得で、なおかつ今のコンパクトになったホンダのブランドイメージとも親和性が高く、好調な売れ行きに結び付いている。
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