実燃費でリッター30kmを叩き出す最新のHV
ハイブリッド車といっても、車格やハイブリッドシステム、バッテリーの搭載量などによって、実際の環境性能は大きく変わってくる。
最近のコンパクトカーはガソリン車であっても燃費性能に優れているから、いくらハイブリッド車でも大きなSUVやミニバンとなると、コンパクトカーのガソリン車と比べれば環境性能では負けてしまう。
しかし、ハイブリッド車でも最新モデル、しかもコンパクトカーとなれば話は別だ。トヨタ ヤリスハイブリッドの環境性能には、ガソリン車はもちろんEVだって太刀打ちできないだろう。
1kmあたりのCO2排出量は65gと、EUの厳しい燃費基準(95g/km)を余裕でクリアするだけでなく、LCAで見ればEVよりも遙かに環境負荷が小さいものだ。
さらにヤリスと同じプラットフォームを採用した新型アクアに至っては、バイポーラ型ニッケル水素バッテリーを採用することで安全で長寿命、低コストを実現し、ヤリスハイブリッドとほぼ同等の燃費性能を実現している。
しかも外部に給電機能を備えるなど、バッテリー容量の大きさはこれまでのコンパクトカーのハイブリッドを大きく超えるものだ。
プリウスPHV(8.8kWh)の6割程度のバッテリー容量を確保しているのだから、EVモードでの航続距離も従来のアクアのような2km程度ではなく、もっと長距離を走れるようになっているハズだ。
こうした能力を積極的に活かすようにして、さらに普通充電機能をオプション設定することで、プラグインハイブリッド(PHEV)として進化することも期待できそうだ。
現時点でEVを選べるユーザーは限られる
これからクルマを購入、あるいは買い替えるユーザーにとってEVを選ぶか、ハイブリッド(PHEVも含む)を選ぶかは、悩みどころなのではないだろうか。
このところEVの紹介記事などで車両価格の高さを指摘する記述も見かけたりするが、それは補助金とガソリンに比べて安い走行時の電気代を差し引いて考えていないからだ。
むしろEVで心配すべきは買い替え時の下取り価格で、あとは充電の環境さえ整っていればEVを買ってもいい状況になってきている。
しかし、駐車場のない一軒家やマンションなどの集合住宅に住んでいるユーザーであればEVの場合、近くに設置されている急速充電器を利用して使い続けることになる。
この急速充電はバッテリーの負担が大きいだけでなく、内部抵抗によってバッテリーが発熱するということは、それだけロスも大きいのである。EVの電費には、この充電によるロスは含まれていない。というのも普通充電だけならロスは非常に小さいからだ。
前述のLCAでも、EVの充電に関してはバッテリーに充電された電力しかカウントしていないが、実際には充電器側と車体側の両方で電力のロスが発生している。
新型アクアのLCAは同クラスのEVと変わらない、というトヨタからの情報もあるが、この充電ロスを考えれば実際にはアクアの方がLCAでは大きく優れることになるハズだ。
充電時のロスは当然、電圧が高くなるほど損失が大きくなるので、近年高電圧化を目指している急速充電の規格も、安全性は確保しても電力損失はそれほど改善することはできない。
何しろ現在、中国と共同開発中のCHAdeMO 3.0(プロジェクト名ChaoJi)では、充電器のケーブル内に冷却液を循環させて、温度上昇を防ぐ機構が盛り込まれるのだ。
充電時の発熱は、すべて電気エネルギーによるものであるから、短時間に充電することがいかに電力を無駄遣いすることになるのか、想像してほしい。
ハイブリッド車の場合、バッテリーを充電するのは、エンジンの動力か走行中の運動エネルギーなので、燃費がすべてのCO2排出量を表しているが、EVの場合はそうではないのだ。この電力という目には見えないモノを捉えてしっかりと評価しなければ、EVやPHEVの環境性能は正確には判断できないのだ。
こうして説明しても、EVもハイブリッド車もユーザーに買ってもらわなければ、優れた環境性能を発揮することなどできない。どちらも最大の目的はCO2の排出量削減なのだから、メーカーも出来るだけ詳しい情報を公開して、お互いの優位性を競い合うような市場を形成していってほしいものだ。
そして、そうしたデータから客観的に考えて、エンジン車の規制を考えるようにするべきだろう。何でも電気にすればいいというものではなく、化石燃料以外にもエンジンを利用する選択肢はあるのだから。
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