毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はホンダ ロゴ(1996-2001)をご紹介します。
文/伊達軍曹 写真/HONDA
【画像ギャラリー】5年の間に3度のマイナーチェンジも報われず…公式画像でホンダ ロゴの変遷をチェック!!!
■あえて没個性的・実用小型車としての最高性能を狙ったロゴ
型破りでクラスレスな存在だった初代ホンダ シティ開発チームの出身者が、初代シティをある意味自己否定し、「自然体で中庸な、街なかで無理なくスイスイ走れる車」を目指して作った。
だが中庸すぎるのがいけなかったか、カタチも走りも当時の潜在ユーザー層には刺さらず、結果として1代限りで消えていった小型ハッチバック。
それが、ホンダ ロゴです。
ロゴは、2代目ホンダ シティの後継車種として1996年10月に発売された、1.3Lエンジンを搭載する小型ハッチバックです。
全長3750mm×全幅1645mm×全高1490mmとなるそのスタイリングは、良く言えば「親しみの持てるシンプル系」ですが、あえて悪く言うなら「個性が希薄」とも言えるかもしれません。
しかし搭載されたエンジンは、ある意味かなり個性的でした。
1.3LのD13B型SOHC8バルブエンジンは超明確な低中速トルク重視型。スペック的には最高出力66ps/最大トルク11.3kgmと抑えめでしたが、その最大トルクの90%を1300rpmというアイドリングに毛が生えた程度の回転域で発生し、最大トルクも2500rpmで発生したのです。
ホンダが「ハーフスロットル高性能」と称したこの設定は、当時としては非常に画期的でした。
1990年代半ば頃の小排気量エンジンといえば、アクセルペダルを思いっきり踏めばそれなりのパワーとトルクが出るものの、低回転域ではスカスカ……みたいなものが大半でしたが、ホンダはあえて高回転域でのパフォーマンスを捨てて「街なかで普通に走るときのパフォーマンス」を、このロゴにおいて追求したのです。
「ハーフスロットル高性能」に類する街乗り優先の思想は、ロゴの足まわりからも見て取れました。
サスペンションの形式はフロントがストラットでリアがトーションビームという、小型車としてきわめて普通なもので、「あくまでも街なかで無理なくスイスイ走れる車を目指す」という意味から、あえてスタビライザーは採用しませんでした。
ロゴはスタビライザーを備えなかったからこそ、街なかでの乗り心地が良く、なおかつ、タウンスピードで走る分には十分な走安性と静粛性を発揮していました。
しかしその半面、高速域でコーナリングのテストをしたがる自動車ジャーナリストからは、スタビライザーが付いていないことに対する批判もありました。
そんなこんなで「ハーフスロットル高性能」を標榜し、そのうえで、あえて奇抜ではない内外装デザインを採用したホンダ ロゴは「玄人受けする小型車」ではあったのですが、普通にコンパクトカーを買う層には今ひとつ刺さらず、販売は低迷しました。
そのためホンダは二度にわたってロゴのフロントフェイスを変更し、途中から16バルブエンジンを搭載したスポーティグレード「TS」も追加しましたが、そちらも不発に終わったと言っていいでしょう。
こうしてホンダ ロゴは2001年5月に生産終了となり、同年6月には販売のほうも終了となったのです。
コメント
コメントの使い方