■先代ノートの純エンジン仕様の販売台数分を補填したい
また現行ノートは先代型が設定していたノーマルエンジン車を廃止した。開発者は「先代型の売れ筋がe-POWERだったから廃止した」と説明するが、ノート全体の25%程度はノーマルエンジン車が占めていた。
e-POWERのみになれば、ノーマルエンジン車を廃止した分だけノートの売れゆきが下がる。ノーマルエンジン車の価格は160万円前後だから、そのユーザーに200万円を超えるノートe-POWERへの乗り替えをうながすのは難しいのだ。
この点について開発者は「先代ノートのノーマルエンジン車のお客様は、デイズとマーチに、約半分ずつの比率で乗り替えている」という。ただしマーチは発売から11年を経過して設計の古さが目立つ。
この点に関して販売店では「運転支援機能のプロパイロットなどを選べることから、軽自動車になるが、デイズへの乗り替えを推奨している」という。先代ノートのユーザーがマーチに乗り替えるなら理解できるが、デイズでは粗利も減ってしまう。
開発者は「ノートオーラには、ノーマルエンジンの廃止によって生じた登録台数の減少を補う目的もある」と述べた。
仮にノートオーラが、先代ノートのノーマルエンジン車と同等に売れると、日産の得られるメリットは大きい。先代ノートのノーマルエンジン車の価格は前述の160万円前後だが、ノートオーラは260万円を超えるからだ。日産としてはノートオーラをたくさん売りたい。
■値段は高いが実は割安なノートオーラ
そこでノートオーラは、ノートに比べて価格を割安にした。ノートオーラGの価格はノートXに比べて約42万円高いが、この内の約26万円は、後側方車両検知警報といったオプション装備の標準装着化によって埋まってしまう。
そうなるとノートオーラの上質な内外装と3ナンバーサイズのボディ、動力性能と走行安定性の向上などは、残りの16万円で得られたことになる。
またノートオーラでは、レザーエディションも割安に抑えた。Gに8万9000円を上乗せすると、本革シートと後席センターアームレストが装着される。ノートではこの内容がセットオプションに含まれるが、本革シートと後席センターアームレストの価格を割り出すと約14万円だ。
つまりノートオーラは、レザーエディションをノートよりも約5万円安く設定して、装着しやすいように配慮した。機能や装備と価格のバランスを見ると「ノートよりもノートオーラが本命なのでは?」と思えるほどだ。
ノートオーラを運転すると、内外装は上質でノイズも小さい。本革シートは低価格で設定されながら、シート内部のパッドを変更して座り心地を向上させた。価格が260万円を超えるから、コンパクトカーの幅広いユーザーに適する商品とはいえないが、ハイブリッド車を購入したい人たちには買い得だ。
ただし注意点もあり、低速域を中心に乗り心地が少し硬く、上下に揺すられる感覚になりやすい。また操舵に対する反応が機敏でスポーティだが、走行状態によっては、左右にあおられる挙動も生じやすい。
■オーラは国産コンパクトカーをより魅力的にする
そこを改善したのがスポーティなノートオーラNISMOだ。エアロパーツの装着に加えて、タイヤ、アルミホイール、スプリング、ショックアブソーバーなどを変更した。ボディ骨格の補強も行われ、走行安定性をさらに向上させている。
乗り心地はベース車のノートオーラよりも硬めだが、タイヤが路上を細かく跳ねるような粗さを抑えたから、ノートオーラNISMOのほうが引き締まり感があって快適とも受け取られる。
しかもノートオーラNISMOの価格は286万9900円だ。内装の質感も高めたことから、ベース車をノートオーラGレザーエディション(269万9400円)と考えれば、約17万円の価格上昇に収まる。
つまりノートオーラNISMOも売る気満々で、ノートシリーズ全体で日産は失地回復をねらう。おそらくNISMOも含めて、ノートオーラは好調に売れるだろう。
仮に失敗すると、日産の国内販売は危機的な状況に陥る。ライバル車のアクアも、ノートオーラを意識して価格を割安に抑えたから(最上級で売れ筋のZは充実装備で240万円)、安穏とはしていられない。
今後のコンパクトカーは、フィットやマツダ2も含めて、激しい販売合戦を展開する。割安な特別仕様車の設定なども行われ、コンパクトカーはますます魅力的になっていくだろう。
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