■スポーツカーは過去にしか向かいようがない
昨年、プロトタイプが公開された時は、クルマ好きの間では肯定派と否定派が拮抗していたように感じる。
肯定派の意見は「初代やZ32のイメージがあってカッコイイ!」といったもので、否定派の意見は「初代っぽくしてるけど、これは違う!」といったもの。
つまり、肯定派は「初代っぽいから好き!」で、否定派は「初代っぽさが足りない!」。
「ぜんぜん新しいZにすべきだった」という意見は、私の知る限り皆無だった。まさに、スポーツカーが向かうべきは過去なのである。
で、改めて新型Zの写真を眺めてみて、どうだろう。
今回公開された写真はブルー。マンガ『湾岸ミッドナイト』に登場する悪魔のZはミッドナイトブルーだが、それを彷彿とさせるような濃いブルーだった。
昨年公開されたプロトタイプはイエローで、日本でのZのイメージからすると、ちょっとカジュアルでフレンドリーすぎる面もあった。ボディカラーが濃いブルーになっただけで、ずいぶんとZらしく見えるようになったのではないだろうか。これが白や黒なら、さらにZっぽさが増すかもしれない。
日本のクルマ好きの評価も、上昇傾向にあるのではないだろうか。
私は昨年のプロトの段階で、「期待をはるかに上回るカッコよさ!」と思った。それはつまり、期待以上に初代のイメージに近く、完成度も高かったという意味である。
が、否定派の意見は、「直6じゃなくV6搭載なのでノーズの長さが足りない」というのと、「フロントフェイスがマヌケすぎる」というのが2大勢力だった。
■直6回帰に舵を切れるのは一部メーカーのみ
直6かV6かという部分は、現在の日産のエンジンラインナップを考えたら、さすがにないものねだりだ。「世界の趨勢は直6回帰なのに」という意見もあるが、それはメルセデスだからできること。
「ジャガー・ランドローバーも直6を復活させたし、マツダも開発してるじゃないか!」と言われればその通りだが、大赤字状態の日産に「直6を出せ」というのはかわいそうすぎる。それはもうイジメである。
Zに積まれるV6ツインターボは、スカイライン400R搭載のものがベースだ。さらなるパワーアップの噂もあるが、北米仕様に関しては、400Rと同じ405馬力と発表されている。
あのエンジンは、近年のツインターボの中でも大傑作。太い低速を持ちながら、回すと「ドカーン!」というパワーの盛り上がりがある。
現在のBMW直6ターボよりもドラマッチックで、数値以上に快感度は高い。あのエンジンがMTでも味わえるだけで、ノーズの短さを補って余りあると考えるべきではないだろうか!
「顔がマヌケ」というのは、確かにイエローのプロトを真正面から見ると、四角い口に楕円形の目をしたNHKキャラクター『どーもくん』に似ていた。
しかし、どーもくんに見えるのは、低い位置から真正面を見たときだけで、少し角度が付けばどーもくんにはならない(笑)。どーもくんに見える角度はピンポイントなので、現実にはほぼありえない。
■まるっきり『コピー』より『オマージュ』くらいがちょうどいい?
守旧派にすれば、「初代や2代目みたいなバンパーがない」「かといってGノーズでもない」というのも否定材料だったが、さすがにそこまでまんまオマージュにすると、ニセモノっぽくなってしまう。
たとえば、フォードGT40のリメイク版であるフォードGTの初代(05年)は、あまりにもオリジナルに忠実すぎて、贋作に見えてしまった。新型カウンタックにも若干その気配がある。
その点、新型Zはちょうどいい。この程度のモダン化はあってしかるべきで、ないと逆にデザインとして致命的。濃色の新型Zの顔は、シンプルでモダンでありながら初代を髣髴とさせる、なかなかの出来ではないだろうか。
むしろ私が残念なのは、テール周りだ。テールランプは32Zのオマージュだが、テール形状そのものがかなり異なるので、そのイメージは希薄。むしろ、今までのZとはかなり別の、特徴のない平凡で無国籍な形状になっている。
このテールを見ても、「おおっ、Zだ!」という感覚は薄い。むしろ180SXあたりのリバイバルに見えないこともない。
とまあ、いろいろ書きましたが、総合的に見て、新型Zは間違いなく素晴らしい。よくぞ作ってくれました。涙が出ます。
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