■後継としてレクサスGSが登場するも…
最近でこそトヨタの車もエッジが利いてるものが多いというか、むしろ「トヨタ車こそ尖ってる!」という印象もあります。
しかし1990年代から2000年代途中頃までのトヨタ車においては、アリストは「良い意味でトヨタらしくない個性とパンチ」を備えた一台であったように思えます。
そんなアリストが、ある意味あっけなく廃番となってしまった理由。
それは言うまでもなく「日本でもレクサスビジネスがスタートすることになったから」にほかなりません。
トヨタが1989年から北米で展開を始めた高級車ブランド「レクサス」では、LS(日本名セルシオ)やRX(日本名ハリアー)などを販売していましたが、1993年からは、1991年に日本でデビューしたトヨタ アリストを「レクサス GS」として販売するようになりました。
当時のLS(FRのフラッグシップセダン)とES(FFの大型セダン)の間を埋めるモデルとして、日本市場で「アリスト」として売られているFRのスポーツセダンが適任だったようです。
そして1997年に日本でアリストが2代目に進化すると、約1年遅れて北米でも、2代目アリストをベースとする「2代目のレクサスGS」がデビューします。
……という物事の流れであれば、2005年に日本でも「レクサス」ブランドのビジネスがスタートするにあたり、3代目のトヨタ アリストは「(日本における)初代レクサス GS」として販売されるのは当然である――ということになります。
レクサス拠点でGSを売り、トヨタオート店とトヨタビスタ店で3代目のトヨタ アリストを売る……というのも100%不可能ではなかったでしょう。
しかし「日本でもレクサスブランドをまずは浸透させる」という大きなミッションを遂行するためには、そんなことをしてもカニバるだけ(共食いするだけ)ですので、無意味です。無意味というか、逆効果です。
「ならばレクサスのセダンはLSとISだけを用意する! そして3代目のアリストは、アリストとしてトヨタブランドで売る!」というのも、まずはレクサスブランドを成功させるという切実なミッションの前では、あまりにも非現実的な作戦です。
こうして、なかなか稀有なスポーツセダンだったトヨタ アリストは「必然的に」消えていったわけであり、そこに是非はありません。
しかしながらレクサス GSは、パンチの利いたエンジンを搭載するスポーツセダンだったトヨタ アリストとはちょっと違う、あえておとなしめのエンジンを搭載させた「ラグジュアリーなセダン」です。
もちろんそこにも是非はないのですが、「できることなら、スポーツセダンとして正常進化し続けたトヨタ アリストを見てみたかった」という思いも正直、胸のうちのどこかにはあります。
■トヨタ アリスト(初代)主要諸元
・全長×全幅×全高:4865mm×1795mm×1420mm
・ホイールベース:2780mm
・車重:1680kg
・エンジン:直列6気筒DOHCツインターボ、2997cc
・最高出力:280ps/5600rpm
・最大トルク:44.0kgm/3600rpm
・燃費:7.1km/L(10・15モード)
・価格:474万円(1991年式 3.0V)
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