毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はトヨタ アリスト(1991-2004)をご紹介します。
文/伊達軍曹 写真/TOYOTA
【画像ギャラリー】その先の「正常進化」が見たかった!? トヨタ アリストをギャラリーで見る
■「打倒シーマ」のもと生まれ落ちたクラウンの派生プレミアムスポーツセダン
初代はクラウン マジェスタと基本コンポーネンツを共用していたものの、当時のトヨタらしからぬエッジの利いたイメージと280psの3L直6ツインターボエンジンで大人気に。
続いて登場した2代目ではクラウンと共用ではない独自のプラットフォームを採用し、これまたまずまずの人気を博した。
だが2005年に日本でも「レクサス」ブランドがスタートするにあたり、惜しまれつつも「レクサス GS」にカタログモデルの座を譲り、勇退せざるを得なかったスポーツセダン。
それが、トヨタ アリストです。
1991年10月に発売された初代アリストは、同時期に発売された「クラウン マジェスタ」とシャシーなどを共用する派生モデルでした。
とはいえアリストのほうのボディデザインはジョルジェット・ジウジアーロ率いる「イタルデザイン」が担当した粋なもので、最上級グレード「3.0V」は最高出力280psの3L直6ツインターボ「2JZ-GTE」を搭載するということで、クラウン マジェスタとはずいぶん毛色が違うスポーティなセダンでした。
ちなみにキャッチコピーは登場時が「創世・アリスト」で、途中から「走りを忘れた大人たちへ。」に変更されています。
搭載エンジンは、前述した280psの3L直6ツインターボのほかに最高出力230psの3L直6自然吸気が用意され、1992年10月にはセルシオに搭載されていた1UZ-FE型4L V8自然吸気も追加。
1994年8月にはマイナーチェンジが行われ、その後何回かの一部変更を受けつつ、初代アリストは好調な販売をキープ。そして1997年8月に2代目へとフルモデルチェンジされました。
2代目のアリストは、クラウン マジェスタとの姉妹関係を断って新規のプラットフォームを採用。
初代アリストは「シャシーに対してエンジンが勝ちすぎ」とも言われていましたが、2代目ではそのあたりの問題が解消されています。
またボディデザインもイタルデザインではなくトヨタの内製となりましたが、そういったケースでしばしば見られる「改悪」といった印象はなく、アリストならではの粋な感じは維持されたように思えます。
2代目アリストが搭載したエンジンは初代と同じく最高出力280psの3L直6ツインターボ(2JZ-GTE)と同230psの3L直6自然吸気(2JZ-GE)でしたが、初代の途中から採用された4L V8自然吸気エンジン(1UZ-FE)はラインナップされませんでした。
その後も2代目アスリトは何度かの一部改良とマイナーチェンジを行い、初代ほどではなかったかもしれませんが、まずまず好調といえるセールスを常に記録しました。
しかし2005年8月から日本でも「レクサス」のビジネスが始まることを受け、次期型のアリストは「トヨタ アリスト」ではなく「レクサス GS」として販売されることに。
そのため2代目アリストは2004年いっぱいで生産終了となり、翌2005年8月に「レクサス」の展開が始まるタイミングで販売も終了。約14年にわたるその歴史に終止符を打ちました。
コメント
コメントの使い方