華はないけど隠れた佳作! 日産 ラフェスタの惜しまれる「素うどん的魅力」

華はないけど隠れた佳作! 日産 ラフェスタの惜しまれる「素うどん的魅力」

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回は日産 ラフェスタ(2004-2018)をご紹介します。

文/伊達軍曹 写真/NISSAN

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■プレーリー リバティの後を受け登場 「便利さ全部乗せ」の7人乗りミニバン

「奇をてらう」「こけおどし」「見栄を張る」といったニュアンスとはまったく無縁の、5ナンバーサイズミニバンという“道具”の本質を愚直に追求し、そのうえで「開放感」も追求。

 しかし世の中の大多数は「見栄が張れるミニバン」を望んだのか、さほどのヒットには至らず、2代目は他メーカーのOEM車となってしまった3列シート車。

 それが、日産 ラフェスタです。

 ラフェスタは、日産が「SHIFT(変革)」をテーマとしていた2004年12月に発売された5ナンバーサイズのミニバンです。

ラフェスタ(写真は初代)。全幅1,695mmの車幅、乗り降りしやすいシート、優れた視界など、扱いやすさを全面に押し出した
ラフェスタ(写真は初代)。全幅1,695mmの車幅、乗り降りしやすいシート、優れた視界など、扱いやすさを全面に押し出した

 ちなみに、日産いわくラフェスタがSHIFTしようとしたのは“開放感”。「開放感を、シフトする(SHIFT_open feeling)」というのがラフェスタのテーマでした(※後期型では「SHIFT_easy driving」に変更)。

 プラットフォームは当時のルノー メガーヌと共通の「Cプラットフォーム」で、スリーサイズは全長4495mm×全幅1695mm×全高1600mmという5ナンバー枠。

 ミニバンとしてはやや低めの全高ですが、前身にあたる日産 リバティと同じく両側スライドドアが採用されています。

 全体のフォルムは、5ナンバーサイズであっても車内スペースを最大化しやすいスクエアスタイルで、電動シェードとUVカット機能を備えた大型サンルーフ「パノラミックルーフ」が標準装備されたというのも特徴でした(※レス仕様もあり)。

大型ガラスルーフの先駆けとなるパノラミックルーフを搭載。そのサイズは長さ1500mm×幅800mmにもなった(写真は初代)
大型ガラスルーフの先駆けとなるパノラミックルーフを搭載。そのサイズは長さ1500mm×幅800mmにもなった(写真は初代)

 また窓のサイズも同時代のミニバンと比べれば格段に大きく、確かに日産が「開放感を、シフトする」とうたったとおりの素敵な開放感がありました。

 搭載エンジンは新開発された2L直4自然吸気「MR20DE」で、最高出力はFF用が137ps、4WD車用が129psでした。トランスミッションは全車エクストロニックCVTです。

 当初のグレードは「20S」と「20M」、アウトドア志向の「プレイフル」という3種類でしたが、2005年8月のマイナーチェンジでプレイフルが廃止され、代わってエアロパーツや専用内装、専用の足回りなどを備える「ハイウェイスター」が追加されました。

 その後もさまざまな一部改良やマイナーチェンジ、グレードの整理などを行った日産 ラフェスタ。

 それは、いわゆる華のある車ではありませんでしたが、5ナンバーサイズながら車内は十分に広く、日産 デュアリスにも搭載されたMR20DEエンジンはトルクフルで、運転特性は素直。そして何より抜群の開放感がある――という、普通に考えてなかなか魅力的な5ナンバーサイズミニバンでした。

 しかし世間は「押し出し感」や「ゴージャス感」「カッコよさ」みたいなものを、5ナンバーミニバンにも求めたのでしょうか。

 日産 ラフェスタは「まったく売れない」ということはなかったものの、さしてヒットはしませんでした。

 そのため日産は2011年6月、ひと足早くラフェスタ ハイウェイスターのフルモデルチェンジを実施しましたが、2代目のラフェスタ ハイウェイスターは日産が開発したものではなく、マツダ プレマシーのOEM車になりました。

 そして翌2012年末には、車名を「ラフェスタ ジョイ」に変えた標準モデルも、その生産と販売を終えたのでした。

次ページは : ■ラフェスタのデザインは本当にダメだったのか?

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