■ラフェスタのデザインは本当にダメだったのか?
前章で申し上げたとおり「華」はないものの、小ぶりな割に車内は広く、開放感バツグンで、なおかつ走りも決して悪くなかった日産 ラフェスタが、基本的には1代限りで販売終了となった理由。
それは、世間的には「デザインが良くなかったから(カッコ悪かったから)」だと言われている場合が多いようです。
なるほど。……でも、本当にラフェスタのデザインはカッコ悪いでしょうか?
たしかにラフェスタは、人間で言うところのイケメンではないかもしれません。
フォルムも、今どきのモテ体型である「細マッチョ」みたいな感じではなく、ちょっととらえどころのない体型の人間みたいです。
そういった意味で「ラフェスタはデザインが良くなかった=カッコ悪かった」とみなすことも、理解できなくはありません。
しかし、そもそも車の「デザインが良い」とか「カッコいい」というのは、どういうことでしょうか? 人間で言うところのイケメンみたいな感じであれば「デザインが良くて、カッコいい車」ということになるのでしょうか?
当たり前ですが、そんなことはまったくありません。
いやまったくないというか、そういった部分も多々あるのは事実ですが、すれがすべてではない――ということです。
「デザイン」とは、ボディのシェイプや細かい部分のあしらいをどうこうする作業だけを指すものではなく、広義には「目的を達成するための思考の枠組み」です。
例えばの話「東京スカイツリー」は、赤くてカワイイ東京タワーと違って、何の面白みもないグレーっぽい色をしています(※実際は「スカイツリーホワイト」という青みがかった白です)。
そのグレーを見て「なんだよ! デザイナーはもっとちゃんとデザインしろよ!」と非難するのは大きな間違いです。
なぜならば、東京スカイツリーというのは東京タワーと違ってかなりデカい(高い)ため、あれに赤なりオレンジなりの強い色を付けてしまうと、目立ちすぎ、圧迫感が生まれ、市民生活に悪影響が出かねません。
だから、東京スカイツリーは「あえて」あの地味めな色を選んだのです。それが、本当の意味で「デザインする」ということです。大事なのは色ではなく「目的の達成」なのです。
そのように考えてみると、日産 ラフェスタという車は「ちゃんとデザインされた車である」ということがよくわかります。
広く、便利に、開放感を味わいながら、4人ぐらいの家族で実用的に車を使ううえでは――ラフェスタのやり方が「ベスト」かどうかはわかりませんが、少なくともかなりベターな“デザイン”がされた車だったのです。
その結果として日産 ラフェスタはイケメン系にはならなかったわけですが、個人的には、ただ顔がいいだけで中身が空っぽな男より、「確かな内面」を持っている微妙な顔の男を「カッコいい!」と心底思いますし、実用車に対しても、同じことを思います。
しかしそう思う人の数はさほど多くはなかったようで、残念ですが、日産 ラフェスタのセールスは今ひとつパッとしなかったのです。
無念です。
■日産 ラフェスタ 主要諸元
・全長×全幅×全高:4495mm×1695mm×1600mm
・ホイールベース:2700mm
・車重:1420kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1997cc
・最高出力:137ps/5200rpm
・最大トルク:20.4kgm/4400rpm
・燃費:15.0km/L(10・15モード)
・価格:199万5000円(2004年式 20M)
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