欧州トヨタは、2021年11月5日、新型クロスオーバーSUV「アイゴX(クロス)」を正式発表した。欧州市場専売のAセグメントのコンパクトカー「アイゴ」をベースとするアイゴXは、デザインから設計まで、欧州にあるトヨタヨーロピアンデザイン&デベロップメントにて開発されたこともあり、コンパクトサイズながら、欧州の交通環境に最適化されたスペックを誇るという。
アイゴXの詳細を確認しながらその魅力に迫りつつ、日本導入の可能性についても考察していく。
文:吉川賢一
写真:TOYOTA
日本の軽ほどではないが、マイクロカーもニーズが高い
欧州市場では、ルノー「クリオ(日本名ルーテシア)」やプジョー「208」、ヤリスといった全長4100mm程のBセグメント、そしてVWゴルフやT-Roc、ルノーキャプチャーといった4300mm程度のCセグメントが、自動車販売の中心だ。今回のアイゴX属するAセグメントは、それらよりもさらにコンパクトなサイズであり、全長は3800mmよりも下、1リッター程度の小排気量エンジン車のことをいう。
このAセグメントの代表的なモデルといえば、トヨタアイゴ(3455mm)のほか、VWアップ(3545mm)や、フィアット500(3570mm)、スマートフォーツー(2785mm)、ルノートゥインゴ(3645mm)など。なかでも、フィアット500(約14万台)やフィアットパンダ(13万台)、トヨタアイゴ(7万台)、VW UP(5万台)などがよく売れている(※2020年の欧州市場販売台数)。
日本の軽自動車のように税金が優遇されることはないので、日本の軽ほど需要があるわけではないが、廉価なAセグメントのモデルは、若者を捕まえるためのエントリーグレードとして、重要な存在となっている。
コンパクトサイズながらスタイリッシュ、先進アイテム充実で使い勝手は抜群!!
さて、今作のアイゴXだが、公開されたボディサイズは、全長3700mm、全幅1740mm、全高1500mm、ホイールベース2430mm。日本車では、スズキのイグニス(全長3700×全幅1660×全高1605)のサイズ感に近い。あのヤリスよりも、全長が240mm短いとなると、相当なマイクロサイズであることが伝わるだろう。車重も940kgと超軽量だ。
ベースである「アイゴ」から、クロスオーバーSUVスタイルへと全面的に手を加えられているアイゴX。凝縮感のあるスタイルで、ヤリスクロスよりも引き締まっていてスタイリッシュ。しかも、こう見えて18インチタイヤまで装着可能。さらには、AセグコンパクトSUV初のキャンバストップまで備えている。
フロントバンパーとホイールアーチの樹脂製モールディングは、空気の流れをタイヤからわずかに外へと導くよう設計されており、フロント周辺やボディサイドでの乱気流を減らすことで、燃費改善を狙っている。また、リアフェンダー周りのモールディングでも、空気の流れをタイヤから遠ざけるように導くことで、空気抵抗を低減する効果があるそうだ。
プラットフォームは、ヤリスで好評のGA-Bプラットフォームをベースに、前後のオーバーハングを切り詰めた。なおAセグ、Bセグの中で、最も軽量なホワイトボディ(車体骨格)となっており、燃費性能に大きく貢献している。最小回転半径は4.7mという、Aセグ内でもトップクラスの小ささを達成。
驚きなのは、こう見えてカーゴスペースの要領が213Lにもなること(アイゴは60L)。また、アイゴに対して55mm上昇させたシートポジションによって、視界は飛躍的に向上。走行性能もロールアングルは小さくなり、騒音レベルも下がるなど、大幅に向上したようだ。
アイゴの現行型が登場したのは2016年と5年も前のことだ。ただ、アイゴXでは、インテリアの質感やコネクティッドの機能など、デザインや機能面において、古さは一切感じられない。
最新のマルチメディアシステムを搭載し、9インチのタッチディスプレイでは、クラウドベースのナビゲーションやOTAにて配信されるアプリケーションなど、拡張性が高い。ワイヤレスチャージシステムのほか、アンビエントライトやデイタイムライトにフルLEDヘッドライトも採用。安全面では、モノクロカメラとミリ波レーダーを利用したプリコリジョンシステムも搭載する。
エンジンは1リッター3気筒エンジン(1KR-FE、最高出力72ps(53kW)/6000rpm、最大トルク93Nm/4400rpm)を搭載、トランスミッションはCVTとMTの2種類となっており、最高速度は151km/h(CVT仕様の場合)。燃費は4.9L/100km(≒20.4km/L)、CO2排出量は110g/km。ヤリスの1.0Lガソリンモデル(実はダイハツ製)と同じエンジンだ。
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