まだ6割が未装着…自分が「凶器」に! 後席シートベルトを締める理由

まだ6割が未装着…自分が「凶器」に! 後席シートベルトを締める理由

 2008年に義務化された、後部座席でのシートベルト着用。だが、2020年に行われた、JAFユーザー調査では、5人中3人はシートベルトをしていない、となるなど、後席シートベルトに関しては、まだまだ、理解が進んでいないように思う。

 前席が厳しく取り締まりがされている一方、後席に関しては取り締まりも厳しくなく、「締めなくても大丈夫」と思っているかもしれないが、シートベルトの必要性は前席も後席も変わらない。むしろ後席乗員がシートベルトをしないことで、前席の乗員が危険な目に遭うことにも繋がってくるのだ。

文:吉川賢一
アイキャッチ画像:Adobe Stock_geargodz
写真:JAF、警察庁、Adobe Stock、写真AC

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高速道路で75.8%、一般道では40.3%の装着率

 昨今のクルマのほとんどが、(人が乗った)前席のシートベルトを締めずに発進をしようとすると、アラームが鳴る。その影響もあり、いまや国内の前席シートベルト装着率は、一般道では99.0%、高速道路では99.7%と、高い装着率となっている(一方で、30万人中の約3000人のドライバーが、何らかの理由で非装着、というのは多い気もするが)。

 これが後席となると、一般道では40%、高速道路で75.8%。一般道では「5人に3人が非装着」、高速道路でも「4人に1人が非装着」ということになる。ちなみに2016年は、35%程度(※一般道の場合)はあったので、徐々に改善している傾向にはある。

 また、シートベルト非装着による違反点数は、前席では1点だが、後席では高速道路のみ1点であり、一般道では口頭注意のみとなる。いずれも反則金はなく、「緩い」ルールとなっている。ただ、これほど軽めの罰則にもかかわらず、装着率が徐々に上がる日本は、ある意味凄い。

後席シートベルトの着用率は、一般道路で40.3%、高速道路では75.8%と、まだまだ低く感じる(警察庁/JAFによるシートベルト着用率状況全国調査2020より)
後席シートベルトの着用率は、一般道路で40.3%、高速道路では75.8%と、まだまだ低く感じる(警察庁/JAFによるシートベルト着用率状況全国調査2020より)

後部乗員がまるでミサイルのように…

 後席乗員がシートベルトを装着せずにいると、事故に遭った際にどういったことが起こるのか。JAFで行った実験(55km/hフルラップ前面衝突試験)によると、以下のような損傷の可能性が報告されている。

・シートベルトを着用していない運転席側後席ダミーは、前方向へと投げ出され、運転席のヘッドレストに頭を打ち付ける
・さらにシートごと、運転席ダミーを押しつぶし、ハンドルとシートの間に運転席ダミーが挟まった
・運転席側後席ダミーの頭部は、ヘッドレストを介して運転席ダミーの後頭部に衝突。HIC(頭部障害基準値。1000を越えると頭部に重大な損傷が発生する可能性がある)は2192まで上昇した
・シートごと押しつぶされた運転席ダミーのHICも1171と非常に高くなった

 スチール製の硬いフレームでできている運転席シートが歪むほど、強烈な衝突であることが分かる。後部乗員がまるでミサイルのようになり、前席乗員を押しつぶしてしまうのだ。この時の車内の様子は、JAFのサイトにて360度動画でVR体験することができる。ぜひ一度、確認してほしい。

 また、シートベルト非装着の場合、車外放出となるリスクもある。車外放出は、自車に挟まれたり、後続車に引かれたりするリスクが高く、かなり深刻な状況に置かれることは想像できるだろう。

 ちなみに、後席シートでも、シートベルトを着用していたダミーは、上体をしっかりと拘束されたことで、前方へと投げ出されることはなかった。

シートベルトを着用していない後席ダミー(赤)は、前方向へと投げ出され、運転席のヘッドレストに頭を打ち付ける。さらにシートごと、運転席ダミーを押しつぶし、ハンドルとシートの間に運転席ダミーが挟まる事態に(JAFの実験画像より)
シートベルトを着用していない後席ダミー(赤)は、前方向へと投げ出され、運転席のヘッドレストに頭を打ち付ける。さらにシートごと、運転席ダミーを押しつぶし、ハンドルとシートの間に運転席ダミーが挟まる事態に(JAFの実験画像より)

 JAFが、後席シートベルトを締めていなかったユーザーへの追加アンケート「後席でシートベルトを締めない理由とは何か」をしたところ、1位が「装着しにくい(45.7%)」、2位「窮屈に感じる(44.2%)」、3位「装着が面倒(38.6%)」であったという。

 「装着しにくい」に関しては、確かに後席のシートベルトは分かりづらいこともある。乗り込む際や、シートバックを倒したときに干渉しないよう、シートに埋め込む形状にしているが、これが使いづらいことで、後席シートベルトの装着率が下がっているのだとすれば、自動車メーカー側が何らかの対策を講じる必要がある。

 一方で、2位と3位に関しては「油断」「怠惰」であり、後席に乗り込む乗員はもちろん、ドライバー側もしっかり意識をしていかなければならない。

 スピード違反や信号無視のように、他者へ被害を与える可能性の高い交通違反とは異なり、事故が起きたときにダメージを負うのはそのクルマに乗っていた人たちだ。そのため「(シートベルトをしなくても)誰にも迷惑はかかっていない」と主張する人もいるようだが、シートベルト未装着での事故の場合、シートベルト装着での事故よりも、乗員のけがの状況がひどくなることから、救急隊や消防、警察、病院など、関与する人員も増えることになる。

 それを多くの人がしてしまえば、保険料が高くなったり、対策に要するクルマの価格や、道路自体へ対策するために税金が上がるなど、マイナス要素は多々ある。

 と、そこまで普段から考えることは難しいかも知れないが、後席でも前席でも、シートベルトの必要性は同じ。それどころか、シートベルトをしない人が車内にひとりでもいることで、万が一の事故の際、他の乗員にとっては凶器にもなりえる、ということは、クルマに乗るすべての人たちに、知っておいてほしい。

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