■軽自動車にe-スマートハイブリッドを搭載するのは確実!
ロッキー&ライズにe-スマートハイブリッドを搭載した時の記者会見でも、軽自動車への発展が示唆されていた。ダイハツは軽自動車の販売1位メーカーだから、e-スマートハイブリッドを軽自動車に搭載できれば、薄利多売も成り立つ。
見方を変えると、ダイハツのハイブリッドを小型車だけに搭載するなら、e-スマートハイブリッドを開発せずにヤリスなどに使われるトヨタのTHSIIを採用しただろう。それを軽自動車に搭載するとなれば、THSIIでは高コストになる。
ノーマルエンジンとTHSIIの価格差は、戦略的にハイブリッドを安く抑えたカローラクロスZ同士の比較でも、35万円になるからだ。ヤリスやヤリスクロスでは、差額はさらに広がる。
つまり低コストのe-スマートハイブリッドは、軽自動車に搭載することも考えて開発され、ノーマルエンジンとの差額を28万9000円に抑えた。
■軽自動車WLTCモード燃費ランキング
1位:スズキ アルト(マイルドハイブリッド搭載車)=27.7km/L
2位:スズキ アルト(エネチャージ搭載車)=25.2km/L
2位:スズキ ワゴンR(マイルドハイブリッド搭載車)=25.2km/L
2位:スズキ アルトラパン(エネチャージ搭載車)=25.2km/L
2位:スズキ ワゴンRスマイル(マイルドハイブリッド装着車)=25.2km/L
6位:スズキ ハスラー(マイルドハイブリッド搭載車)=25.0km/L
6位:ダイハツ ミライース=25.0km/L
8位:ホンダ N-WGN=23.2km/L
9位:ホンダ N-ONE=23.0km/L
10位:ダイハツ ミラトコット=22.6km/L
11位:スズキ スペーシア(マイルドハイブリッド搭載車)=22.2km/L
12位:ホンダ N-BOX=21.2km/L
13位:ダイハツ タント=21.0km/L
※2WDの場合
ダイハツが軽自動車に本格的なハイブリッドを搭載する理由は、二酸化炭素の排出抑制を目的とした2030年度燃費基準に適合させるためだ。2020年度と同じくCAFE(企業別平均燃費基準)を採用するが、2030年度では、その燃費基準値が大幅に引き上げられる。
例えばタントXの車両重量は900kgで、これに相当する燃費数値は、2020年度燃費基準であればJC08モード燃費で23.7km/Lだ。タントXのJC08モード燃費は27.2km/Lだから、23.7km/Lの燃費基準値を余裕で達成している。
ところが2030年度燃費基準になると、車両重量が900kgのタントXは、WLTCモード燃費で約27.8km/Lをクリアせねばならない。現在のタントXのWLTCモード燃費は21.0km/Lだから、燃費数値を32%向上させる必要が生じる。
軽自動車に多く採用されるマイルドハイブリッドの燃費向上率は6~8%だから、2030年度燃費基準の達成手段としては弱い。本格的なストロングハイブリッドが必要で、それが軽自動車版のe-スマートハイブリッドだ。
ロッキー&ライズに採用されたe-スマートハイブリッドのWLTCモード燃費は28.0km/Lで、1.2Lのノーマルエンジンは20.7km/Lになる。
e-スマートハイブリッドの燃費向上率は35%だから、タントXにe-スマートハイブリッドを搭載すれば、WLTCモード燃費を現状の21.0km/Lから28.4km/Lに引き上げられる。2030年度燃費基準の約27.8km/Lをクリアできるわけだ。
e-スマートハイブリッドの軽自動車版は、早ければ2022年にフルモデルチェンジする次期ムーヴに搭載されるだろう。現行ムーヴXのWLTCモード燃費は20.7km/Lだから(CVTの違いによってタントの21.0km/Lよりも悪い)、これをベースに燃費数値が35%向上すれば27.9km/Lだ。
ムーヴは車両重量が820kgと軽いこともあり、2030年度燃費基準を達成するには、WLTCモード燃費を28.5km/L前後まで向上させねばならない。従ってダイハツの軽自動車を幅広く2030年度燃費基準に対応させるには、e-スマートハイブリッドを搭載して、さらに低燃費化することも求められる。
e-スマートハイブリッドのエンジンは、発電機の作動だけを担当するので、効率の優れた回転域を集中して使う制御も考えられる。
ただしその場合は車両の負荷が少ない時でも高効率なエンジン回転を保ち、過剰に発電された電気をリチウムイオン電池に蓄える必要も生じる。そうなると余裕のある電池容量が必要で、価格を高めてしまう。このあたりのバランスが大切だ。
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