地味に重要な「乗降性」の決め手と悪い車の見過ごせないデメリット

デザインと乗降性を両立するクルマは販売が好調か

セダンでも乗降性に優れているクラウン
セダンでも乗降性に優れているクラウン

 ドア開口部の形状も乗降性に影響する。前後のウィンドウやピラー(柱)が寝ていると、頭を下げて乗り降りせねばならない。先に挙げたクーペは、フロントウィンドウとピラーも寝ているので、乗降時に気を使う。後席は、天井を後ろに向けて下降させた車種の場合、乗降性が悪化する。

 5ドアハッチバックのプリウスやアクアはこの典型で、後席に乗り降りする時は頭を下げねばならない。セダンでは、レクサスISの乗降性が悪い。全高が1450mm(2WD)と低く、前後席ともにウインドウとピラーを寝かせたからだ。後席のドアを備えたクーペと考えた方が良い。

 そのいっぽうでセダンでも、後席を重視するセンチュリーの乗降性は抜群に優れている。クラウンは従来型に比べると少し悪化したが、それでもセダンでは乗り降りがしやすい。総じて売れ行きを優先させたデザインが乗降性を悪化させるが、クラウンなどは、乗り降りしやすくて販売も堅調だ。

 それならばメーカーは、売れ行きを伸ばせるデザインと乗降性の両立を真剣に考えるべきだ。現行フィット以降のホンダ車は、遅ればせながら、乗降性に配慮するようになった。設計の新しいホンダ車は、全般的に乗り降りしやすい。

 後席については、足元空間の広さも乗降性に影響を与える。足元空間が狭いと、乗降時に足を置く位置も決まってしまうので、乗り降りしやすい自由な姿勢を取りにくい。後席の狭いヤリスやマツダ2などは、後席の乗降性が悪い。

 またこれらの車種は後席を重視していないので、足元空間が狭いだけでなく、ドアの開口部も下降している。乗降時に頭を下げる必要も生じるから、乗降性がさらに悪化する。

 逆に同じコンパクトカーでも、前述のフィットやノートは、全高を立体駐車場を使いやすい高さに抑えながら乗り降りしやすい。背の高いスライドドアを備えたルーミーやソリオは、乗降性がさらに向上する。

クルマ購入時には乗降性も確認するとなお良し!!

 以上のように乗降性は、前後のウィンドウやピラーの形状、足元空間の広さ、床の高さ、サイドシルの張り出し方、シートの着座位置とサイドサポートの形状など、さまざまな要素が影響を与える。

 そしてドア開口部の上端が下がっていて、乗降時に頭を下げる車種は、乗り込んだ後の居住性も全般的に悪い。頭上の空間が乏しく、側方視界も悪いためだ。このような後席は、閉鎖感と圧迫感が伴うため、クルマ酔いも誘発しやすい。

 つまり後席の乗降性は、その車種の後席に対する配慮を示すバロメーターになり得る。後席の乗り降りがしにくい車種は、概して後席の快適性も低いのだ。

 さらに後席のサイドウィンドウが狭い閉鎖感の伴う車種は、ドライバーから見たときの後方視界も悪い。後方視界は安全を左右する大切な機能だから、購入時には、後席の乗降性や居住性と併せて縦列駐車なども試したい。視界や取りまわし性を確認しておく。

 特に年配になると、乗降性の悪いクルマは、運転するのにも気が重い。逆に乗り降りしやすい車種は、ユーザーへの気配りや配慮を感じる。乗降性を確認すると、その車種を開発した人達の優しさも伝わってくる。

 従って新車を購入するときには、乗降性も必ず確認していただきたい。販売店の展示車でも簡単に確かめられる。そのクルマの本質と開発者の気持ちに触れて、嬉しくなることもある。

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