エンジンを作らないホンダなんていらない!? いったいホンダは何処へいくのか?

■神が降りてきたF1最終戦

 2021年でF1を撤退するホンダは、レッドブルと宿敵メルセデスは、ドライバーズポイントが並んで最終戦に持ち込まれた。これだけでも、神のイタズラかと思わったが、決勝レースの行方は、F1史に残る結末となった。

2021年12月12日の朝、F1最終戦に臨むホンダが掲載した広告。F1撤退と感謝を表したこの広告は世界中のSNSで大反響を呼び、ファンからの「ありがとう」と撤退を惜しむ声があとを絶たなかった
2021年12月12日の朝、F1最終戦に臨むホンダが掲載した広告。F1撤退と感謝を表したこの広告は世界中のSNSで大反響を呼び、ファンからの「ありがとう」と撤退を惜しむ声があとを絶たなかった

 レースの終盤、誰もがメルセデスが優勝すると思っていたが、突如神様のイタズラが始まったのだ。数ラップを残して他チームがクラッシュし、セイフティカーが出動。2位を走っていたレッドブルは迷わずPITインしてタイヤを交換。リスタートしたときの猛ダッシュにかけたのだ。

 神が下した結果は最終ラップでメルセデスを抜いたレッドブルが優勝し、若きホープのマックス・フェルスタッペンが年間チャンピオンとなり、同時にホンダは30年ぶりの栄冠を得た(コンストラクターズ1位はメルセデス、2位レッドブル・ホンダ)。

2021年12月12日、F1第22戦アブダビグランプリで優勝しドライバーズチャンピオンを獲得した表彰台でのフェルスタッペン選手。2021年度のF1世界選手権はいろんな意味で歴史に残るであろう
2021年12月12日、F1第22戦アブダビグランプリで優勝しドライバーズチャンピオンを獲得した表彰台でのフェルスタッペン選手。2021年度のF1世界選手権はいろんな意味で歴史に残るであろう

 こんな劇的なレースがホンダF1の最後のステージになるとは、誰も予想できなかった。

 ホンダは2輪事業から始まったが、1964年にはF1参戦と同じタイミングで初の4輪車を開発。正確に書くなら軽トラックとスポーツカーを同時に発売していた。

 ということで、ホンダにとってはF1とスポーツは4本のタイヤがある表裏一体のクルマなのであった。そして2021年、F1が終了し、最新のNSXもTypeSという最終モデルを限定販売して、幕を閉じる。

 次の時代に生まれ変わるF1とスポーツカーを見る日はくるのだろうか。

 いままでのホンダを見ていると、F1とスポーツカーを止め続けることができないのも、ホンダなのだ。きっと、その勇姿を表す日は来るだろう。

 おっと、その前に2023年のレースが面白そうだ。というのはル・マンシリーズのLMDhクラスに(ダラーラ、オレカ、リジェ、マルチマチックの中から1社を選ぶ)、アキュラチームとして参戦する予定とのこと。Hマークではないが、ホンダの技術がポルシェやBMWと戦う勇姿を見ることができそうだ。

■空へ、宇宙へと羽ばたくホンダ

 株式会社ZOZOのファウンダーである前澤さんが民間人として宇宙ステーションを楽しんことが話題となっているが、時代の空気は空から宇宙へシフトしている。

 ホンダは自社開発のプライベートジェットをすでに200機も販売し、次のターゲットを明らかにしている。そのひとつがハイブリッド式の電動垂直離着陸機 eVTOL である。

ホンダのコア技術を活かしたHonda eVTOL。電動化技術を生かしたガスタービンとのハイブリッドのほかにも、燃焼や空力、制御技術といった、これまでHondaがさまざまな領域で培った技術が生かされている
ホンダのコア技術を活かしたHonda eVTOL。電動化技術を生かしたガスタービンとのハイブリッドのほかにも、燃焼や空力、制御技術といった、これまでHondaがさまざまな領域で培った技術が生かされている

 「Honda Jet」で培ったガスタービンで発電し、電気モーターで飛ぶ仕組みだ。このハイブリッド方式により、航続距離は約400km、最高速度は270km/h以上を目指している。ホンダの電動化は空にも羽ばたくことになる。

 もう一つの話題はホンダとJAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)との共同研究が始まったことだ。このプロジェクトは月などの宇宙で活動するために不可欠なエネルギーを循環型再生システムを構築する共同研究である。

月面での循環型再生エネルギーシステムの活用イメージ図。ホンダはJAXAと2020年度から2022年度の3年間「循環型再生エネルギーシステム」の共同研究協定を締結し、燃料電池システムを活かした酸素、水素、電気などのリサイクルについて研究している
月面での循環型再生エネルギーシステムの活用イメージ図。ホンダはJAXAと2020年度から2022年度の3年間「循環型再生エネルギーシステム」の共同研究協定を締結し、燃料電池システムを活かした酸素、水素、電気などのリサイクルについて研究している

 ホンダが従来から取り組んできたeMaaS(エネルギーを主体としたMaaS)の経験を活かす。すでにトヨタも月面探索機のルナクルーザーを開発し、予定では2029年に月に打ち上げらる。

 本田宗一郎さんが夢みた空飛ぶ自動車はすでに実現可能な段階となったが、次の夢は宇宙なのかもしれない。

 最後に自動運転の話しをするが、せっかく日本政府が道交法と保安基準を改正し、ホンダのレジェンドの世界初のレベル3を型式認定を与えたものの、レジェンドは限定100台の法人リースで終了し、しかも工場の操業も終わってしまった。

 ドイツではメルセデス・ベンツSクラスが2021年12月にドイツ国内法で型式認定を受け、2022年は中頃からBEVのEQSと同時にレベル3を市販する。ホンダの取り組みは中途半端に思えるが、それだけコスト的も技術的にも大変な開発だったのかもしれない。

 だが、ホンダはライダーセンサーの代わりに5つのミリ波レーダーを駆使する「HONDA SENSING 360」を2022年発表のCR-Vから市販する。この技術はライダーセンサーほどの高性能ではないが、高度なレベル2を実現するには十分な性能を誇っている。


※編集部註:ライダーセンサーはクルマやバイクなどの金属物と、それ以外の非金属物の検知・測距に優れるレーザー光を活用する。一方、金属物の検知と測距に優れるミリ波電波を活用するのがミリ波レーダー。単眼およびステレオカメラは歩行者や車線・標識などの形状認識に優れる。そのほか近距離の障害物の検知に優れる超音波を活用するソナーセンサーがある。これらによって自車周辺の状況を高い精度で把握する。

全方位安全運転支援システムHonda SENSING 360(ホンダ センシング サンロクマル)のシステム構成図。ホンダSENSING 360の適用を2022年に中国で発売する四輪車から開始し、2030年までに先進国で発売する全モデルへ展開することを目指している
全方位安全運転支援システムHonda SENSING 360(ホンダ センシング サンロクマル)のシステム構成図。ホンダSENSING 360の適用を2022年に中国で発売する四輪車から開始し、2030年までに先進国で発売する全モデルへ展開することを目指している

 ホンダは2050年にはホンダが絡む2輪4輪の死亡事故をゼロにするシナリオを公開している。ホンダの環境と安全への取り組みは、決して中途半端ではなかったことがわかった。

 三部新社長の頭の中には、どんな未来を描いているのだろうか。私の分析とそう大きく変わらないのではないだろうか。最後にお願いしたいのは、200万円台で若い人が買えるスポーツモデル(FFのホットハッチがホンダらしい)を是非、市販してほしい。

ベストカーが製作したホンダe タイプRの予想CGイラスト。バッテリーの性能が向上し安価になればお手ごろなBEVスポーツカーが開発可能になるかも!? 期待してますホンダさん!!
ベストカーが製作したホンダe タイプRの予想CGイラスト。バッテリーの性能が向上し安価になればお手ごろなBEVスポーツカーが開発可能になるかも!? 期待してますホンダさん!!
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