2021年、もっとも売れたコンパクトSUVとなった、トヨタ「ヤリスクロス」。他を圧倒する燃費性能を誇り、また、ガソリン車は180万円~、ハイブリッド車も228万円~という低価格。いまコンパクトSUVを検討するならば、このヤリスクロスは、外せない選択肢になっている。
この王者ヤリスクロスと、同じカテゴリに存在するモデルといえば、ホンダのヴェゼルもしくは日産キックス、となるが、そこへ2021年10月、ノートAUTECHクロスオーバーという存在が登場した。ノートAUTECHクロスオーバーは、ヤリスクロスとは若干コンセプトが異なるモデルではあるが、一般的には「同類」とみなされるところであろう。
そこで、王者「ヤリスクロス」と挑戦者「ノートAUTECHクロスオーバー」それぞれの長所と短所を洗い出し、2台を徹底的に比較してみよう。
文:吉川賢一
写真:TOYOTA、NISSAN
デザインが魅力のノートAUTECHクロスオーバー、ネックは価格
ノートAUTECHをベースに、車高を25mmほどハイリフトし、大径タイヤと専用16インチホイール、樹脂フェンダーモール、ルーフモールド、そして前後にクロスオーバー専用エンブレムを装備、という内容で登場したノートAUTECHクロスオーバー。インテリアには、縫い目のないダイヤモンドキルトを施したシート表皮や、至るところにAUTECHのイメージカラーであるブルーのステッチがあしらわれ、モダンでオシャレな空間に仕上げられている。
走りを支えるシャシーも、ルノーのルーテシアやキャプチャーが採用する、次世代上級小型車向け「CMF-B」を採用しており、乗り心地やロードノイズといった性能も良い。また、最高出力116ps、最大トルク280Nmを発揮する第2世代e-POWERは、車重1,240kgのノートAUTECHクロスオーバーを加速させる十分なパワーがある。価格は、2WD(X)が税込253万7700円、4WD(X)が税込279万6200円だ。
ノートAUTECHクロスオーバーの強み
日産製ではなく、AUTECH製であることで、思い切ったインテリアのクオリティアップを実現しているノートAUTECHクロスオーバー。専用シートカバーやドア内張り、センターコンソール、インパネ、専用本革ステアリング等には青い刺繍が入り、インパネにはブルーの木目調「紫檀(シタン)」柄の塗装をするなど、センスが光るコーディネートは他にはない魅力だ。
表面は柔らかくモチモチとした触感で座り心地がいいシートは、筆者もお気に入りだ。また、クルマから発する電子音の「走行サウンド」が心地よく、充電時のエンジン回転音も気にならない。ヤリスクロスハイブリッドはエンジン駆動時に割と喧しいノイズが発生するため、走りの質感は、ノートAUTECHクロスオーバーのよさといえる。なお最小回転半径は5.2mと、ヤリスクロス(5.3m)よりも数値上小さいが、大差はないといっていいだろう。
ノートAUTECHクロスオーバーの弱み
その反面、機能面や使い勝手といった面において、SUVのヤリスクロスに敵わない点がある。まず、最低地上高については、ノートAUTECHクロスオーバーが145mm、ヤリスクロスが170mmとあと少し足りない。大きめの凸凹道や雪深い道では、SUV的な走破性は期待出来ないと思ってよい。また、ヤリスクロスハイブリッドにはある給電用コンセントが、ノートシリーズには設定がない。
そしてなにより、価格の高さだ。ノートの良さを全力で味わうためにはナビシステムやプロパイロット(ナビリンク付)といったフルパッケージオプション(税込44万2200円)が必須となるが、そうなると、車両価格は2WDであっても300万円を軽く超えてしまう。
トヨタのようにディスプレイオーディオ(スマホ連携ができる)の設定はないので、ディーラーOPのナビ導入(20万円弱)も高価となる。日産も早くディスプレイオーディオ化を進めた方がいいと筆者は思うのだが、様々な葛藤があるのだろう。
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