カリスマ経営者の鈴木修氏が昨年に勇退したけれど…… 今後の「スズキ」は大丈夫か?

■俊宏社長体制で4兆8000億円の売り上げを目指す

 鈴木修会長の退任により、スズキを本格的に率いることになった鈴木俊宏社長は、2015年6月に社長就任し6年が経過するなかでの全権委譲となった。スズキは、トヨタと同じく織機メーカーとして創業し一昨年(2020年)に創業百年を迎えている。

 その鈴木家は代々婿養子が継承して、修氏も2代目の俊三氏に婿入りしたが、俊宏社長は、その鈴木修氏の長男として鈴木家で初めての男子ということで、いずれスズキの経営に携わることが確約されていたともいえる。

 スズキは鈴木俊宏体制による次の百年に向けて胎動している。「小・少・軽・短・美」のスローガンを継承して2025年度までのスズキ新中期経営計画で、3兆円企業から4兆8000億円売上への飛躍を目指す。

 国内においては、「軽自動車を守り、かつAセグ&Bセグの小型車での地歩を築く」ことだ。軽自動車のワゴンRスマイルの投入で、ワゴンRが昨年10月にホンダN−BOXから軽トップを奪還し、アルトも原点回帰のフルモデルチェンジで軽を守り抜く気概を示した。

 世界戦略では、断トツトップのインドの生産基地拡大により未開のアフリカを睨んだ独自の展開が見込まれている。

 世界的な脱炭素の流れが加速し、コロナ禍と半導体・部品供給不足が続くなかで、生き残りを占う電動化戦略についても2025年までにBEV発売を計画。「ゲタ代わりに使える軽を極める」(俊宏社長)と、カリスマが去っても「修流経営」の伝承で、今後もスズキは進んでいく。

2021年12月に発売された新型アルトと鈴木俊宏社長
2021年12月に発売された新型アルトと鈴木俊宏社長

■トヨタ連合のなかでのスズキの今後の役割は?

 スズキは、2018年にトヨタと資本提携を結んだ。両社は、長期的な提携関係の構築・推進のために相互に株式を取得し、トヨタは960億円、4.94%をスズキに出資し、スズキは480億円、0.2%を出資して相互に株式を持ち合うことで、スズキがトヨタ連合入りしたのだ。

 スズキの資本提携は1981年の米GM、2009年の独VWに続く3度目となる。

 GMグループでは巨鯨GMに呑み込まれずに小型車を担う位置づけを確立し、28年間の良好な提携関係を築いたがGMの経営破綻により解消。これによりVWと包括資本提携を結んだが、VWの支配主義にスズキが反発し国際仲裁裁判所に持ち込むほどこじれた経緯がある。

 トヨタとの資本提携は、新世代技術「CASE」や新世代移動システム「MaaS」への対応へトヨタグループ力の活用、スズキの生き残りへの「鈴木修流」の置き土産だ。

 エントリーカー(軽・Aセグ)のBEV商品化は、鈴木俊宏社長がデンソーで修行していた頃に、デンソーの有馬社長と机を並べたこともあり、デンソーとの連携も深めてスズキ得意の小さいクルマのものづくりに生かす方向だ。

 トヨタとしてはインド市場でのスズキとの協業活用だろう。インドは、いずれ現在の世界最大の自動車市場である中国を凌ぐ市場を形成していくとの見方もある。

 スズキは、インドの生産拠点を近い将来、未開の自動車市場といわれるアフリカへの供給基地化を目論んでおり、トヨタが豊田通商を通じてアフリカ市場への積極進出を狙っていることとも合致する。

インドにあるグジャラートC工場。今後もインドの生産拠点はスズキの海外戦略の要になる
インドにあるグジャラートC工場。今後もインドの生産拠点はスズキの海外戦略の要になる
【画像ギャラリー】鈴木修会長が世に送り出した初代アルトと、その意思を受け継ぐ現行型アルトの魅力(7枚)画像ギャラリー

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