昨年、緊急走行中の救急車の前に徒歩で入って立ち止まり、走行を繰り返し妨害した罪で、20代会社員の男が、「道路交通法違反(道路における禁止行為)」の疑いで秋田区検に書類送検された。県警の調べによると、「日頃からサイレンの音がうるさく、嫌がらせをしようと思った」と話したという。
妨害したことで、救急搬送中の患者が亡くなってしまう可能性があることを想像できなかったのかと、首をかしげたくなる件だが、本件のように意図的ではなく、無意識のうちに緊急車両の走行を妨げてしまった場合、交通違反に問われるのだろうか。
文:吉川賢一
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緊急走行を妨げると、反則金6000円、違反点数1点
緊急車両に道を譲るのは「マナーの範囲」だと思っている方もいるようだが、しっかりと道路交通法で励行が定められている行為だ。緊急車両の走行を妨げる行為に関して、道路交通法では「緊急車等妨害違反」と「本線車道緊急車妨害違反」という2つの種類がある。
「緊急車等妨害違反」は、緊急車両が自車に近づいているのにも関わらず、そのまま走行を続ける違反行為だ。反則金は、普通車の場合だと6000円、交通違反点数は1点となる。
「本線車道緊急車妨害違反」は、緊急車両が、一般道や高速道路などで、本線車道に車線変更するときや、本線車道に合流するときに進行を妨害する違反行為だ。こちらも同じく、反則金は普通車で6000円、交通違反点数は1点でとなっている。
昨今は、ドライブレコーダーや監視カメラといった映像記録装置を装備するクルマが増えており、その場で取り締まりされなかったとしても、映像データが残っていれば、後からお尋ねが来る可能性は高い。緊急車両に遭遇したら、しっかりと安全を確認したうえで、道を譲ろう。
狭い場所でも周囲のクルマと協力して道をあける
冒頭で紹介したような不届き者はさておき、関心事は、渋滞中や道幅の狭い箇所などで、進路を譲ることが難しい場合。この場合も、我々一般車両は、周囲の安全に注意しながら前後左右のクルマと協力して、緊急車両が通行できるよう、最大限の努力をする義務がある。
もちろん、何をしてでも道を譲らなければならない、というわけではなく、「安全運転の義務」(道路交通法第70条)の範囲で努力することが求められる。縁石やガードレールにボディをこすりつけるまでして道をあけたり、前のクルマにぶつけて押し除けたりしてはいけない。
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