■並行輸入のLM 結局ナンバーはついたのか?
2020年時点で大きな話題となった並行輸入のレクサスLM。結論から先に書くと、台湾から輸入したLMは日本の保安基準を満たすことが証明され、(最初の1台に関してはかなりの時間と手間はかかったものの)ナンバーは取得できている。そして、外国大使館の公用車として、さらに一般オーナーへも数台が納車されているとのことだ。
「え? なんでそんなに大変? アルファードをベースに日本で製造された日本車なのに? 日本の保安基準を満たしているのは当然なのでは?」と思う方も多いと思うが、実際、これが非常に大変なのである。
簡単に言うと、並行輸入で日本に入って来たクルマがナンバーを取得する(=日本の保安基準をすべて満たす)ためには、そのクルマが販売されていた国が1958年に締結された国連の多国間協定である「車両等の型式認定相互承認協定」(以下、58協定)の締約国がどうかで大きく変わってくる。
そのクルマや部品が「どこで製造されたのか」ではなく、「どこ向けに販売されていたのか」が基準となってくるのだ。中国や台湾はこの58協定メンバーではないため、日本で製造したクルマであっても並行輸入(逆輸入)で日本に持ち込んだ場合、すんなりナンバーが取れるわけではない。
LMの場合、アルファードがベースであり共通部品が多いからまだマシなのかもしれないが、保安基準を満たしていることを証明する書類は部品ごとに必要となる。ドアミラーのカバーなど保安基準に関係ないものはノーチェックだが、都内の並行輸入業者によると日本の保安基準を満たしていることが証明される技術適合書類(通称:技適)が必要な部品は「100や200じゃきかない」とも。それぞれに、メーカー担当者のサインかそれに準ずるメーカー発の正式書類が必要となる。
保安基準が関わるすべてのパーツにおいて、どこの国のどの工場でいつ製造されたのかというところまで詳しく確認される。
さらに2021年7月1日からは、並行輸入車の審査事務規程が厳格化(とくに技適関連の書類の確認)されているため、58協定の非加盟国からの輸入→登録はかなり難しくなっている。
なお、58協定非加盟国である中国からの輸入であっても、自動車メーカーが完全にバックアップしているのであればナンバー取得は比較的容易である。中国第一汽車の紅旗H9などは、メーカーである第一汽車が完全にバックアップしており、各種の書類もスムーズに出されていることから、紅旗H9第一号車のナンバー取得は3か月程度で完了している。
いっぽう(ウワサの域を出ないが)レクサスLMのナンバー取得において技術適合の書類を偽造して保安基準を満たしていることを証明しようとした悪い業者もいたそうだが、日本の自動車技術総合機構(NALTEC)がそんな偽造を見破れないはずはない。提出された技適書類などはすべてそれを発行した現地メーカーなどの担当部署、担当者に連絡をして確認を取っている。
なお、2021年7月から並行輸入車のナンバー取得が厳格化された背景には、そのような悪徳業者を門前払いする目的もあったと聞く。実際、あの手この手でナンバーを取ろうとする悪い業者は少なくなかったのだ。
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